どのような働き方であろうと、仕事には必ず飽きが生じます。
飽きない仕事はないと言っても過言ではなく、一生涯仕事に飽きずにいられる人はそう多くありません。
そのため、仕事に飽きたときどのように行動するかは、誰もが予習しておいたほうがよいでしょう。
この記事では、仕事に飽きたときの対処法についてお伝えしていきます。
仕事に飽きたから転職すると一概に決めず、飽きたときに選べる行動の引き出しを増やしてみてください。
仕事に飽きるよくある理由
ここでは、「仕事に飽きを感じるよくある理由」をお伝えしてきます。
飽きたと感じてもそこにあるニュアンスは異なるため、より詳細に言語化できるようになりましょう。
理由①:関心の薄れ
関心の薄れとは、興味の対象が変わることです。
「知りたい」「欲しい」と感じなくなることであり、そこにあった熱量がふっと消えてしまいます。
例.関心の移ろい
・幼いころはゲームが好きだったが、社会人の今は乗り気になれない
・大学生時代は旅行が好きだったが、社会人の今は疲れるだけに感じる
・成長するためにこの会社を選んだが、もう刺激はいらないから給料だけ欲しい
関心は固定的ではなく、次から次へと移るものです。
ひとつのテーマへの関心であっても、そのテーマ内で関心があちこちに移行することで関心は長続きします。
このテーマ内での関心の移行が止まったとき、熱量が失われて飽きが生じるのです。
例.アリへの関心の移行
1.アリの巣の形に関心を持つ
2.アリの捕食や種類などに関心が移る
3.アリと他の生物の違いについて関心が移る
4.アリについての疑問がなくなり、関心を持てなくなる
準備中:興味関心の育み方
理由②:未来への絶望
未来への絶望とは、延長線上の未来に期待を持てなくなることです。
「逆転できない」「今後は良いことのない人生だ」と感じなくなることであり、仕事を継続する動機が失われた状態です。
例.未来への絶望
・私はこれ以上成長できないだろう
・あとはただこれを繰り返していくだけの人生か
・私がこれを続けていても求めている成果は得られないだろう
絶望している未来が本当か嘘かは関係ありません。
たとえ予測した未来が真実でなかったとしても、「これ以上求めても意味がない」と感じた時点で飽きが生じます。
そういう意味では未来に絶望したときに生じる飽きとは、「この人生の流れをどうにかしたい」というシグナルとも言い換えられるでしょう。
理由③:報酬感への慣れ
報酬感への慣れとは、以前までのポジティブ感情が小さくなることです。
「当たり前」「刺激が足りない」と感じることであり、期待や成果物に慣れてしまっている状態です。
- 期待への慣れ:何度も体験したことであり「これ以上はない」と期待できなくなる
- 成果物への慣れ:何度も手に入れたものであり価値を小さく見積もってしまう
日々を同じことの繰り返しのように感じて感情が動かなくなっているならば、それは報酬感への慣れが理由の飽きだと言えます。
その日常に心地よさを感じられればよいですが、たいていは刺激を求めて転職のようなハネムーン効果を得ようとします。
しかしハネムーン効果は長く続かないため、再び報酬感に慣れた日常に戻り、転職を検討する日々を繰り返してしまうでしょう。
★ハネムーン効果とは
ハネムーン効果とは、新しい取り組みの初期段階では満足感が高まりやすい傾向のことです。
たとえば、「恋人ができた直後」と「交際2年目」では感情に温度感があるでしょう。
これは好きという気持ちが小さくなったのではなく、恋人から得られる報酬感が減少したことが理由です。

理由④:行動への抵抗感
行動への抵抗感とは、取り組もうとすることを抑制する心の動きです。
「不安」「怖い」「めんどくさい」と感じるほど、報酬と労力の釣り合いが取れなくなり飽きと感じるようになります。
- 報酬<労力:コスパの悪い行動、もうやりたくない、損失感
- 労力<報酬:コスパのよい行動、もっとやりたい、お得感
初めて取り組むことや苦手意識のあるものは抵抗感が強まりやすいです。
「そこまでして続けたくない」という感覚を飽きと認識して、「飽きたからやりたくないのだ」と結論付けようとします。
理由⑤:過度なストレス
過度なストレスとは、行動や結果に伴うネガティブな感情です。
「もう嫌だ」「もうどうでもいい」と感じることであり、理想や期待を手放そうとする態度として現れます。
例.過度なストレス
・上司に怒鳴られてやる気を失った
・家庭でも職場でも居場所がなくてすべてを投げ出したくなる
私たちは「報酬よりも損失」「遠くよりも目先」の感情を加重評価する傾向があります。
そのため、過度なストレス状態の維持を肯定できるほどの報酬を用意することが難しく、投げやりな態度になってしまうのです。
また、ストレスは視野を狭め、現在に焦点を絞る働きがあります。
短絡的に物事を考えてしまうため、現在のストレスからいち早く離脱できる選択を採用しようとしてしまうでしょう。
- 加重評価:強いストレス→均等の崩壊→飽きを認識
- 視野狭窄:強いストレス→現状維持への危機感→現状維持への飽きを認識

理由⑥:思考や行動の最適化
思考や行動の最適化とは、パターンが形成された状態です。
「悩まない」「ついやってしまう」ことであり、その行動自体からは面白みを感じ取れません。
例.思考や行動の最適化
・思考の最適化:オムライスをつくるとき手順について悩まない
・行動の最適化:歯を磨くときに強く意識しない
最適化されることで労力を節約できますが、「同じことの繰り返し」と捉えてしまう一面もあります。
もしも仕事の大部分が最適化されてしまえば、成長見込みのないその時間を浪費だと感じて嫌気を差しても無理はないでしょう。
攻略したり解明したりする楽しさを重視する人ほど、思考や行動の最適化による飽きは天敵になる傾向があります。
仕事に飽きやすいタイミング
ここでは、仕事に飽きやすいよくあるタイミングについてお伝えしていきます。
飽きが生じたタイミングを検討することは、飽きの正体を見定めるヒントになるでしょう。
タイミング①:プラトー
成長速度は時間と比例関係ではなく、「著しく成長する段階」と「成長が停滞する段階」を交互に繰り返します。
プラトーとは「成長が停滞する段階」のことであり、努力を放棄しやすい時期でもあります。
例.プラトー時期の感覚
・もうこれ以上は成長できないのかもしれない
・どんどん追い抜かれることに挫折感が生じる
・練習量を増やしているのに成長を実感できない
挑戦における醍醐味のひとつは成長することですが、プラトーではその報酬感を得られません。
また、この停滞感が一生続くように錯覚して、行動を継続する意欲が減少してしまいます。
飽き性と呼ばれる多くの人は、初期段階のプラトーで躓く傾向があります。
自分の成長速度が停滞したと感じたとき、「もう私はこれが限界だ」と考えて関心が他に移ってしまうのです。
準備中:上達するには
タイミング②:脱初心者
脱初心者とは、一通りのことをできるようになった状態のことです。
社会人2~3年目あたりが該当しやすく、この時期では「私が学べることはほとんど残されていない」と自分の能力を過信する傾向があります。
しかしこれはダニング=クルーガー効果という、認知バイアスの一種による可能性が高いです。
★ダニング=クルーガー効果
ダニング=クルーガー効果とは、能力が低いほど自分の能力を過大評価する傾向のこと。
逆に能力が高い人は、自分の能力を過小評価しやすい傾向があります。
脱初心者の時期は他者と自分の能力の差を測ることが難しいため、少し天狗のような態度になります。
自分より優れた人間を見ても、「その練習をしていないだけ」「ただ知識が足りないだけ」と能力差は小さいと捉えるでしょう。
そうして成長意欲が失われていき、努力することへの熱量が減少して飽きたと感じてしまうのです。
何かを極めるとは、大枠を修めた後の「一般人からは違いが分かりづらい細部を磨き上げること」です。
マニュアルには記載できるものはたいてい大枠であり、それができるようになった状態が脱初心者に当たります。
タイミング③:習慣化の前兆
行動が習慣化されていくと、その取り組みに飽きが生じます。
今まで考えながらやっていたことが無意識的にこなせるようになり、自分にはイージーに感じるためです。
成長が伴わない同じ作業の繰り返しのように感じ、刺激が足りなくなって継続することに抵抗感が生じます。
例.習慣化による飽き
・業務:数をこなすだけと感じる
・日常:毎日同じ日々の繰り返しと感じる
・出社:働くことへのワクワク感が失われる
・人間関係:心地よさの一方で時間の無駄と感じる
継続のコツは習慣にすることですが、習慣化されるほど行動を続けると刺激が失われて継続意欲が低下することがあります。
習慣化されかけている行動を止めないためにも、「退屈感は習慣化の前兆である」と捉えることをおすすめします。
タイミング④:目標達成後の燃え尽き
大きな目標を達成したとき、その後の日々に飽きが生じます。
「私はやりきった」という努力の反動により、それ以上の刺激を味わいづらくなるためです。
たとえ新たな目標を設定しようとしても、苦しい日々が始まることや達成感への慣れにより、「もういいかな」と現状維持を選びやすくなります。
例.目標達成後の燃え尽き
・またがんばるのはめんどくさいな…
・どうせがんばったって大した報酬を得られないしな…
・目標設定と達成を繰り返す日々を続けるだけの人生なのか…
目標達成のプロセスを手順化することで達成確率は高まりますが、その分新鮮さも失われてしまいます。
取り組む内容について焦点を当てづらくなり、どのような挑戦にも意欲が湧きづらくなるでしょう。
「目標設定と達成の繰り返し」というパターンの認識は、人生をひどく退屈に感じさせるのです。

タイミング⑤:優れている他者と出会った後
自分よりも優れていると感じる他者と比較をすることで、今取り組んでいることに価値を見出せなくなることがあります。
「これをがんばっても意味がない」と感じてしまい、行動への関心が薄らいでしまうのです。
例.上方比較による飽き
・どうせがんばってもトップにはなれないし
・私より簡単に稼げている人がいるのがなんだか辛い
・世界のために頑張っている人がいるのに私は何をしているのだろうか
優れた他者と出会った後、自分の取り組みがコスパの低いものと認識しやすいです。
自分の取り組みを俯瞰することで魅力的だった成果物をつまらなく感じさせ、行動を続ける動機を見失ってしまいます。
自分を負け組と感じさせる人と出会うときは注意してください。
特にSNSでは勝ち組と遭遇しやすいため、マインドが整うまでは使用を控えることをおすすめします。
仕事に飽きたときの対処法
ここでは、仕事に飽きたときの対処法についてお伝えしていきます。
人によって効果量が変わるため、自分に適した方法を探してみてください。
対処法①:過去を振り返る
過去を振り返ることで、熱量を取り戻せます。
薄れていた過去の記憶が想起され、動機が強まったり抵抗感が弱まったりするためです。
- 動機の強化:挑戦しようと決断した原点、他者への影響を参照する
- 抵抗感の弱化:困難を乗り越えた過去の記憶を参照する
現在に焦点を絞ることで没入感は増しますが、今の感情に影響されやすくなります。
特にネガティブな感情や思考に翻弄されやすくなり、些細な困難でも行動を止めてしまうでしょう。
視野狭窄による退屈感を抱いたら、生じた抵抗感に抵抗できるような記憶を探してみてください。
過去のエピソードは自分ひとりで思い出すよりも、誰かに語ったほうがより効果的になりやすいです。
対処法②:一度手放してみる
離れることで大切さを再び実感できることがあります。
大切なものは近いと当たり前になり、その維持には不満ばかりが募るめです。
辛かった日々も過ぎ去れば愛おしく感じるのは、まさにこれが主な原因です。
仕事がすでに自分の一部になっているならば、一度手放してフラットな状態に戻してみましょう。
もし手放しても飽きが継続するならば、その仕事は自分にとって大切なものではなくなっているのかもしれません。
対処法③:目を瞑って継続する
飽きたからといって、かならずしも辞める必要はありません。
一時的な飽きである可能性もありますし、続けた先で新たな意味を見出せることもあります。
仕事に飽きが生じても、目を瞑って継続するのもひとつの手なのです。
ただし、目を瞑って継続するにはそれなりの納得感が必要になります。
「これを続けることには意味があるだろう」と考えられる自分なりの仮説的な答えを見つけてみてください。
対処法④:行動をゲーム化する
仕事をする意味を見出すことは難しいですが、作業への退屈感には仕事をゲーム化する方法が有効です。
ほどよい緊張感を作ることで、仕事に没入できるようになります。
例.仕事をゲーム化する
・難易度を上げる:時間を測る、時間を短くする、質を高める
・新しい企画として取り組む:マニュアル化、最適化、競争、協力、開発
自分が意欲的になりやすい餌を理解することは、人生のさまざまな取り組みをモチベーション高くやりとげることに役立ちます。
「私が全力で走りたくなるためのニンジンとは何か」と、自分のモチベーションが上がるパターンを探してみてください。
対処法⑤:自分の願望と向き合う
自分の願望とは、「本当はどこを目指したいのか」という本心による目的地です。
続けた先にある未来への希望を持てることで、飽きに振り回されずに行動を継続できるようになります。
- 願望がある:仕事を手段として捉えて、飽きても続けようとする
- 願望がない:仕事で楽しむことに必死になり、飽きたら続ける意味を見出せなくなる
願望とは玉ねぎのように、複層的なものです。
手に入れたいモノであるほど上層、手に入れたい感情であるほど下層である可能性が高まります。
- 上層(手段):お金持ちになりたい、社長になりたい
- 下層(目的):家族と平和に暮らしたい、周りから必要とされたい
手段に飽きたら、本心からの目的を探してみてください。
自分ひとりで探すことが難しい場合は、コーチングのような内省を支援する専門家に相談することをおすすめします。
仕事に飽きないための対策
仕事への飽きに抗うためには、飽きないための工夫を徹底することも有効です。
ここでは、飽きづらくなるための対策についてお伝えしていきます。
対策①:体調を管理する
体調が優れないときは、何事にもやる気が出ないものです。
報酬感を受け取りづらくなり、作業のすべてがストレスに感じます。
その結果「仕事=苦しい」と学習し、「私のやりたいことではない」と結論に至ってしまうでしょう。
- 肉体的疲労:睡眠不足、空腹、栄養不足、体力不足、筋肉疲労
- 精神的疲労:無意味感、多忙感、緊張状態、他者への配慮、弱みの活用
飽きないためには、報酬を受け取りやすく、ストレスを感じづらくなることが重要です。
そのためにも、何よりもまず体調管理を徹底して、前向きになりやすい土台を育むことをおすすめします。
対策②:進捗を確かめる
進歩のない仕事には嫌気が差すものです。
何も前進しないタスクには意味を見出しづらく、無駄な労働だったと捉えやすくなるでしょう。
例.確かめたい進捗
・夢の進捗:夢にどれほど近づいたか
・目標の進捗:目標計画がどれほど進んだか
・能力の進捗:能力値がどれほど上がったか
・関係性の進捗:関係性がどれほど深まったか
進捗を確かめるには、「目的や目標」「現在地の理解」「フィードバッカー」が重要です。
どこから来て、どこを目指し、今どこにいるのかを把握できないと、前進しているのか後退しているのかが分かりません。
何かを比較しないと変化に気づけないため、前進したと気づける工夫を施してください。
例.フィードバッカー
・計画
・上司や講師
・コーチやメンター
・延長線上の未来とのズレ

対策③:動機を複数作る
ひとつの仕事を続けるには、ひとつの動機に依存しないことが重要です。
たとえば成長動機だけのために仕事をしていたら、プラトー時期に報酬感が生じなくなり継続が困難になるでしょう。
動機を複数作っておかないと、短期的な挑戦に終わりやすいのです。
例.仕事における動機
・自身の能力向上意欲
・金銭や地位の獲得意欲
・目的や目標への達成意欲
・仲間との関係性構築意欲
自分がときめきやすい動機を見つけるには、過去の充実していた時代を思い出すことが有効です。
充実していた時代の環境を再現しようとすることで、自然と飽きづらく粘り強くなる環境が整います。
ただし、働く目的となる最優先の動機を見失わないように注意してください。
対策④:ニーズを満たす
仕事への不満が大きくなりやすい原因として、ニーズの不足感が挙げられます。
ニーズとは満たしたいものではなく、満たさなければ不安や怒りが生じる欲求です。
例.ニーズ
・保証されたい
・感謝されたい
・尊重されたい
・自由でありたい
・対等に見られたい
感謝されたくてもその言葉を発しないお客様がいるように、よい仕事をしたからといってニーズが満たされるとは限りません。
もしニーズが満たされないと、作業や仲間、顧客へのいら立ちを募らせて仕事に嫌気がさしてしまいます。
ニーズへの不足感を解消するには、仕事以外で満たす環境を作ることがおすすめです。
たとえば感謝されたいならば、パートナーにありがとうと言ってもらったり、ボランティアに参加したりするとよいでしょう。
漠然として不満感がある場合は、自分の中にある満たされたい欲求を探してみてください。

対策⑤:目的地を決めておく
「飽き=悪」というわけではありません。
歯磨きに飽きたからといって、それがダメでもないし、辞める必要もないでしょう。
そもそも実現したい行動目的があるならば、それを叶えるための手段に飽きようとどうでもよいのです。
- 行動目的:歯医者に行きたくない、健康的な歯でありたい
- 手段:毎日歯を磨く
重要なことは、その目的を今も実現したいと思えているか否かです。
仕事に飽きないことはあり得ないため、飽きてもその行動を継続したい理由となる目的地を固めてみてください。
ただし、目的地を探そうとすると「そんなことのためにがんばりたくない」と考えやすく、人生迷子状態になることがあります。
自分を突き動かす意味探しを趣味にしないためにも、行動しながら模索するという状態を維持することをおすすめします。
例.人生迷子
・お金のためだけに働きたくない
・何のために働けばいいか分からない
・これとは言えないが面白い仕事をしたい
・ワクワクする仕事でないならば働きたくない

まとめ
飽きたからといって仕事を変える必要はありません。
目的のために惰性で続けてもよいですし、飽きを解消する方法はいくつもあります。
仕事に飽きを感じたら、まずはその飽きの正体を見定めましょう。
そもそも、飽きとワクワクを繰り返しながら、少しずつ目的地にたどり着くのが一般的な働き方です。
ずっとワクワクした状態で仕事に取り組み続けることは困難であるため、その前提を手放すことをおすすめします。
