スタンダード市場に上場したり、大企業の研修で扱われていたりと、日本でも知名度が高まってきたコーチング。
しかし、コーチングはコーチと受講生(クライアント)の相互作用が重要であり、コーチを雇うだけでは大した成果を得られません。
にもかかわらず、コーチ側はコーチングの扱い方のレクチャーをする人が少なく、受講生がただ困り果てるというケースをよく見かけます。
この記事では、コーチングの活用方法についてお伝えします。
コーチング効果を高めるための受講生側の必要な取り組みについて紹介するので、コーチを雇うか悩んだときは参考にしてみてください。
コーチングの2つの役割
コーチ効果を最大化するには、まずはコーチングが何を提供するものであるかを把握しましょう。
ここでは、コーチングが提供する2つの役割についてお伝えします。
理想を実現するための役割であり、この役割が必要なときにのみコーチングを受講することをおすすめします。
役割①:自分を実験する
自分を実験するとは、自分の反応を知り、自分を活用できるようになることです。
「何を感じるのか」「何を選びたいのか」「どうしたら選べるのか」を主なテーマとして、自身の感覚や感情を掘り下げます。
- 自分の反応を知る:何が好きで何が嫌いか、どんな未来がほしいか、何を幸せだと感じるか
- 自分を活用できるようになる:選びたい行動を実行できるか、なぜ実行できないのか
「答えは自分のなかにある」というのはよくコーチングで使われる言葉です。
しかし、この言葉は「自分を実験する」ことを意味しており、外側の正解は外側にしかないことに注意しなければなりません。
- 自分が答えを持つ:感情、思考、欲求、理想、抵抗感、立ち止まっている本当の理由など
- 外側に答えがある:挨拶のしかた、点数を高める方法、売上を伸ばす方法など
「がんばりたいのにがんばれない」「何を目指したいか分からない」などの問題は、自分への無知から生じます。
やり方の問題ではない場合は、自分に対して関心を持ち、自身を知るための実験をしてみてください。
例.自分を知るための情報
・経験から感覚や思考を振り返る
・表情や振る舞いをフィードバックされる
役割②:世界を実験する
世界を実験するとは、自分の行動がどんな影響を及ぼすのかを理解することです。
「仮説構築」「仮説選択」「仮説実行/検証」が、主なテーマになります。
- 仮説構築:今まではどんな結果になっていたのか、理想を実現するにはどんな選択肢があるか
- 仮説選択:理想を実現するためにはどの選択肢を選ぶべきか
- 仮説実行/検証:選んだ仮説を実行したらどんな結果になったか、それはなぜか
実現したい理想が明確でも、そのための行動を建設的におこなえるわけではありません。
私たちは自身の仮説を把握しておらず、効果的でない行動が習慣づいているためです。
また、一般的な正解があったとしても、外部要因や内部要因によって適切な方法は変わります。
例.自分にとっての正解は状況により変化する
・理想:夫婦の関係性を改善したい
・外部要因:パートナーとの関係性、パートナーの特性、周りの目線、年齢、性別、家計
・内部要因:思考、経験、親や友人、出身、強み/弱み
・一般的な正解:感謝を伝える、デートをする、ご機嫌をとる、ご機嫌になる
・非効果的な習慣:名前を呼ばない、役割を明確に区分している、稼げば愛が伝わると考えている
同じ行動の繰り返しでは、高い確率で同じ結果しか生じません。
そのためコーチングは理想を明確にしたら、現状の行動を効果検証するとともに、もっと有効な行動を探し試すことを促します。
- 理想の明確化:私はどんな未来が欲しいのだろうか
- 現状の行動の効果検証:私はその未来のためにどんな行動をして、どんな結果が生じているのか
- 有効な行動の探索と実行:他の選択肢は何があるだろうか、どれから試そうか、どんな結果になったか
自分の行動により世界がどう変わるかを実験しないかぎり、理想を実現するための行動を習慣づけることは困難です。
「自分にとっての正解を見つけるための試行錯誤」が1人では難しい場合は、その実験の管理をコーチングで補ってみてください。
コーチングにおける受講生側の4つの責任
コーチングは、コーチと受講生の相互作用によって効果が高まります。
コーチを雇えば万事解決するのではなく、受講生自身もコーチング効果を最大化するための責任を負っているということです。
ここでは、コーチングにおける受講生側の責任についてお伝えしていきます。
1つでも欠けるとコーチングがほぼ機能しなくなるため、その場合はコーチング以外に自己投資したほうがよいかもしれません。
責任①:行動
行動への責任とは、理想実現のために受講生は全力で行動をしなければならないということです。
コーチングで約束されるものは、「理想が自動的に実現されること」ではなく、「理想を実現するための支援をすること」だからです。
- 理想が自動的に実現される:買うだけで勝手に理想が叶う
(例.山頂に行きたいとき商品を買ったら支援者が山頂まで運んでくれる) - 理想を実現するための支援:理想を実現しようとするプロセスを支える、実現可能性を高める
(例.山頂に行きたいとき商品を買ったら支援者が山頂まで一緒に登ってくれる)
コーチングを雇ったからといって、思考や試行を省略できず、行動量は減らせません。
むしろ理想を実現するために「全力を尽くすこと」「さまざまなパターンを試すこと」を要求され、コーチを雇わないときよりも行動量は増加するでしょう。
- いつもどおり:慣れている行動を続ける(行動量は多くともPDCAがほとんど回らない)
- コーチを雇う:慣れていない行動を要求される、行動後に効果検証を要求される
「コーチを雇ったのに何も変わらなかった」という批判の大半は、行動の他責によるものです。
行動することの責任を放棄してしまい、単なる悩み相談にとどまり日常が何も変化しないのです。
- 行動の他責:言われたことだけを実施しようとする
- 行動の自責:立てた計画を主体的に進めようとする
コーチングを受講するときは「日常業務」と「検証業務」の2つに分類してみてください。
理想の実現可能性を高めるには、そのどちらも自らで実行することが重要になります。
- 日常業務:普段の仕事、目標計画の実行
- 検証作業:課題に対する新たな試み、気づきを日常に反映させること
責任②:意欲
意欲とは、やる気やモチベーションのことです。
コーチングは「理想の発見」の役に立つため、よく「コーチングはやる気を出させてくれるものだ」と誤解してしまう人がいます。
- コーチングによるやる気:進みたい方向性を見つける、次に試す仮説を見つける/選ぶ
- 受講生が求めるやる気:めんどくささや怖いという感覚を解消してくれる
自然と毎日やる気がみなぎるような、そんな都合の良い魔法の杖的なツールではありません。
行動するためのアクセルやブレーキを一緒に探しはしますが、だから意欲やモチベーションが高まるというわけではないのです。
- アクセル:行動を促進する要因
- ブレーキ:行動を抑制する要因
理想を見つけても行動はめんどくさいですし、恐怖が和らいでも行動するのは億劫なままです。
あくまで「やる/やらない」の葛藤を支援する程度であり、葛藤そのものを打ち消すほどの効果は期待できません。
- 葛藤の支援:自分の感情や思考に気づき、建設的に何を選択するかを決めることを手伝う
- 葛藤を打ち消す:葛藤そのものを消滅させてドーパミンが分泌された状態を保たせる
「コーチングへのやる気」「目標達成へのやる気」を出させてもらおうと期待しないようにしてください。
意欲を他責にしたい場合は、軍隊のような強制力の強い施設や環境に入ることをおすすめします。
責任③:主体性
主体性とは、前に進むことを自ら主導する態度のことです。
主体性はコーチングを受講する際の態度に現れます。
- 主体性なし:言われたことだけをする、何を話すかを決めてこない、お客様感覚
- 主体性あり:前進するために解決すべき課題を探すためにコーチを活用する
どのようにコーチを活用するか全力で考えてください。
そして、「何のためにコーチをどう活用したいか」をしっかりとコーチに伝えましょう。
主体性が欠けている受講生に対して、コーチは無力です。
「買ったんだから後は何とかしてよ」というお客様感覚を持つ場合は、求めている成果物を売っている業者から購入することをおすすめします。
★コーチングの主な支援内容
・今日の支援:このセッションを「何を見つける/決める時間」にしたいのか?
(例.情報発信が怖くてできないから、今日はその理由を明確にしたい)
・全体の支援:理想を実現するためにコーチングには何を期待しているのか?
(例.ブレーキをかけてほしい、目的と手段の入れ替えに気づいてほしい、振り返りを徹底してほしいなど)
責任④:選択と責任
「何を選ぶか」「選んだ結果どうなるか」はすべて受講生の責任になります。
コーチが確認するのは「それが正しいか否か」ではなく、「心と選択が一致しているか」であるためです。
もし仮にコーチに責任転嫁が可能だと、選択が適当になったり、選択を正解にするための努力をしなくなったりなどの弊害が生じてしまうでしょう。
- 心と選択の一致:受講生が認めた理想を実現するための選択であるか
- 正しいか否かの判断:その選択で幸せになるか/不幸になるか、成功するか/失敗するか
方法の有効性に関する情報を提供することもありますが、それは適切に選ぶための材料を増やすことを目的にしています。
より効果的な選択肢を選ぶための支援こそすれど、正誤判断はコーチの専門ではないため、どの選択をすべきかという誘導やアドバイスはしません。
例.夫婦関係を改善したい
・正誤判断:何をするとどんな結果になるのか、おすすめの方法はどれか
・コーチの支援:関係改善とはどういうことか、選択肢は何があるか、有効そうなのはどれか
・選択の責任①:たとえそれで関係性が悪化しても受講生の責任であり、コーチはせいではない
・選択の責任②:たとえそれで関係性が改善しても受講生の責任であり、こーちのおかげではない
幸せになるのも不幸になるのも自分だけの問題であり、他者からはどうしても他人事でしかないのです。
真に自分の人生と向き合うためにも、選択と結果の責任はすべて自分で負うようにしてください。
- 自己責任:「私が不幸なのは私の責任だ」と考え幸福になるための別の方法を模索する
- 責任転嫁:「私が不幸になったのはAさんの責任だ」と嘆き自分を幸せにしてもらうことをAさんや第三者に期待する
コーチングが有効なタイミングとは
コーチングは「延長線上の未来でいいのか」を問い続けるため、自分の人生と真剣に向き合い続けたいならば常に受講していたほうがよいでしょう。
とはいえ、コーチングは比較的高額であるため、売上が低いうちは転換点となる重要なタイミングごとに契約を結ぶことをおすすめします。
ここでは、コーチングが特に有効になりやすいタイミングについてお伝えしていきます。
ここで紹介するタイミングが訪れたら、コーチング受講を選択肢の1つに入れてみてください。
タイミング①:選択に迷っているとき
「仕事を辞めるか続けるか」のような二者択一の選択に迷っているときは、コーチングを受講してみてください。
自分の中の理想や期待、他の選択肢や選択基準などを明確にすることが、悔いの少ない選択をするためには欠かせないためです。
- 理想:どんな未来が欲しいのか、真に願っていること、単に回避したいこと
- 期待:辞めることでどうなると考えているのか、続けることでどうなると考えているのか
- 選択肢:理想を実現するために他にどのような道があるのか
- 選択基準:何を重視して選択すべきか
また、私たちは勢いだけで大きな決断をしてしまうことがあります。
しかし、本来は大きな決断であるほど慎重になり、小さな実験を通して適切な選択をするための情報を集めなければなりません。
そのプロセスをコーチングで促せてもらえるため、ひとりで考えるよりは建設的に選べるようになります。
- いきなりの決断:ろくに情報収集もせずに会社をやめて起業する
- 決断するための実験:副業として軌道に乗れそうか確かめる
タイミング②:目標や行動に抵抗感があるとき
今目指しているもののために実行することが困難なときは、コーチングを受講してみてください。
「やり方」ではなく「心」というやり方以前の問題のときです。
- やり方の問題:どうすればいいのか、コツや押さえどころ、実行手順
(例.パソコンの操作方法が分からないから書類を作れない) - 心の問題:行動への不安や恐怖、目標への意欲や関心、目標や目的の捉え方
(例.新しいことに挑戦するのが怖いからパソコンを学ぶ気になれない)
行動できないとき、誰かに教わればいいと考えがちです。
しかし、適切な方法を知ることは大切ですが、知ったからといって必ずしも実行できるとは限りません。
行動できない理由にもさまざまあり、その理由ごとに適切な対処法が異なります。
コーチングでは、行動できない理由を見つける、または行動できるまで試行錯誤することを目指します。
ひとりで悶々として行動が止まっている場合は、対話によって現状を客観視して、有効となるかもしれない仮説を見つけて実行してみましょう。
例.よくある行動できない理由
・青芝現象:仮説はあるけどもっと簡単な方法があるはず。それが見つかるまで行動しない
・目標の衝突:「遊ぶ時間が欲しい」けど「お金もたくさん稼ぎたい」
・知識の不足:具体的にどうすればいいかイメージできない
・先延ばし癖:やるべきことは分かるけどめんどくさくてやりたくない
・行動への恐怖:やるべきことは分かるけどリスクが大きくてやりたくない
・目標や行動の捉え方:目指すことや継続することに意味を見出せない
タイミング③:がんばっているのに成果が出ないとき
大量に行動していても、成果が得られないときがあります。
これは有効性の低い行動を継続している可能性が高いため、今一度自分の仮説を見直してみることが必要です。
例.行動しても成果が出ない理由
・質や量が足りない:勉強量が足りていない、熟達度が足りていない
・他に満たすべき条件がある:勉強は足りているがリサーチが不足している
・非効果的な行動を継続している:野球を上手になりたいのにサッカーの練習をしている、成果が出ないと分かりきった行動を脳死的に続けている
有効な方法や仮説の欠点、取り組むべき課題を教えてもらえるならば、その方が成果は早く出るでしょう。
そのため、まずは正解を知っている人を探して、真っ先に相談することをおすすめします。
しかし、方法を教わることに抵抗感があったり、有効な方法に個人差があったりする場合は、教わるだけでは前進できないことがあります。
その場合はコーチングを受講して、「試行錯誤をすることの支援」や「有効性の高い行動を選び実行するための支援」を提供してもらうとよいでしょう。
- 教われない環境:正解を知っている人がいない、試行錯誤とリサーチを同時並行する必要がある
- 有効な方法の個人差:外部要因や内部要因に影響を受けやすい目標や方法
- 教わることへの抵抗感:教わること/調べることが実行できない(独自性を大切にしたい、プライドがある、今の仮説を捨てたくない)
コーチングを活用するための心構え
ここでは、コーチングを十分に活用するために覚えておきたいことをお伝えしていきます。
心構え①:適切な課題を選択しよう
コーチングでは、2週間に1度のセッションと呼ばれる対話がおこなわれます。
このセッションでは、「何かしらの気づきが必要な前進するための課題」を掘り下げます。
例.よくある課題
・SNSの発信が怖いからその理由を見つけたい
・なぜ人に頼めないのかその理由の正体を見つけたい
・仕事をするのが億劫だ。その理由を解き明かしたい
どの課題について話し合うかによって、コーチングの成果は大きく左右されます。
理想と現状を隔てるボトルネック的な課題であるほど、重要な気づきが得られ、セッションのたびに延長線上から理想の方向へとてこ入れされるためです。
例.課題の違い
・目標:プロ野球選手になること
・現状:成長に関して停滞感を感じている
・緊急度の低い課題:来年の練習メニューが組めない
・緊急度の高い課題:明日が締切の練習メニューが組めていない
・重要度の低い課題:次に買うゲームを悩んでいる、嫌いな先生がいる
・重要度の高い課題:監督に相談できない、練習への意欲が低い、練習に集中できない
・枝葉の課題:夜眠れない、やる気がでない、誰にも相談できない
・幹の課題:全力でがんばったのにダメだったときの周囲の反応が怖い
課題選びは受講生の役割であり、今の自分にもっとも相応しい掘り下げるべき、解決すべき課題を見つけてこなければなりません。
しかし、課題選びを丁寧に教えてくれることは少なく、また受講生もお客様感覚になり課題選びが適当になりがちです。
その結果、話しても話さなくても何も変わらないような雑談になり、コーチングの成果がどんどん小さくなります。
コーチング期間中は、コーチと対話すべき課題を全力で探すことを心掛けてください。
課題についてのレクチャーが必要な場合は、理解できるまで何度でもコーチに相談することをおすすめします。
★課題の選び方のコツ
課題は、次の4つの順で選びましょう。
「もしそれが解決されたらどう変わるか?」と考えることで、重要度を確かめられます。
①重要度が高い×緊急度が高い:ボトルネックであり、今すぐ解消しなければならない
②重要度が高い×緊急度が低い:ボトルネックであるが、今すぐに解消しなくてもよい
③重要度が低い×緊急度が高い:ボトルネックではないが、今すぐ解消しなければならない
④重要度が低い×緊急度が低い:ボトルネックでもなく、今すぐ解消しなくてもよい
また、ティーチングではなくコーチングとしてコーチを活用することが大切です。
講師の代替手段としてコーチを活用しないようにしてください。
・講師:自分の外に正解がある課題(方法を教わる、正しいかを判断してもらう)
・コーチ:自分の中に正解がある課題(動けない理由、選択の迷い、自分の仮説の明確化)
心構え②:自分に適したコーチを選ぼう
コーチングは指導ではなく対話による支援です。
最低条件は「話しやすさ」であり、自己開示が難しい場合はコーチングが機能しなくなります。
例.話しやすくなる要因
・信頼:背景、守秘義務、学歴
・性別:同性か異性か
・見た目:好ましい恰好か
・雰囲気:話を受け止めてもらえそうな感覚があるか
・言葉遣い:使う言葉にストレスを感じないか
・話すスピード:話しやすいテンポで対話ができるか
・コーチ側の思想:コーチの目的、コーチングへの解釈
自分に適したコーチを選ぶことが大切であり、適当なコーチを選んではなりません。
この人となら自分を深く探索でき、一緒に理想までの旅路を歩んでいけると思える人を見つけましょう。
とはいえ、会った瞬間に信頼でき、すべてを自己開示できる人なんて存在しません。
コーチ選びに関しては、次のサイクルを何回も回すことをおすすめします。
- 信頼できそうなコーチを探す
- コーチを選び実際にコーチングを受講する
- 3カ月続けても関係性が深められないなら継続をやめて他のコーチを探す
コーチングは相性が非常に大切な支援方法です。
コーチ側はそれを理解しているため、信頼できない、話しづらいというときは率直に伝えてみてください。
心構え③:早さと適切さのバランスを取ろう
早さと適切さとは、前進することと自分の内面を探ることです。
理想に近づくためには、このバランスを取りながら前に進まなければなりません。
- 早さを重視する:次は何をすべきか、どうやったら成功するか、成功法則とは
→重視しすぎると:無理して動くようになる。または動けずに立ち止まる - 適切さを重視する:自分の本心、未来のあり方、過去の意味、感情
→重視しすぎると:真実を探すことが目的になる。日常が変わらず理想に近づけない
どちらを重視しやすいかは人によって異なります。
コーチはこのバランスを取ろうとしますが、日常でどう動くかは受講生が決めることです。
重視したいものを重視する限り、コーチが支援できる幅が狭まり成果も小さくなります。
- 早さを重視しやすい人:目標達成が好き、教わればうまくいく自信がある、限界を感じやすい
- 適切さを重視しやすい人:内省が好き、正しさや論理に関心がある、悩みやすい
おすすめのバランスのとり方は、重視しているものを重視していないものでサンドウィッチにすることです。
そのように意識的に行動することで自然とバランスが取れて、コーチングを有効活用しやすくなります。
- 早さ重視の人:「適切さ→早さ→適切さ」の順で行動するようにする
(例.本当は何をしたいか→実践してみる→うまくいかない本当の理由はなにか) - 適切さ重視の人:「早さ→適切さ→早さ」の順で行動するようにする
(例.まずはやってみる→本当にこれをしたいのか/失敗するのはなぜか→もう一度試してみる)
心構え④:コーチングの作用機序を理解しよう
コーチングを受講するときは、なぜコーチングが有効なのかという作用機序について理解しましょう。
有効になる理由を知らないと、単なる対話だと軽視したり、魔法の杖のような過剰な期待をしたりするためです。
- 軽視:成功者でもない人と話すだけでうまくいくわけがない、いいから方法を教えてくれ
- 過剰な期待:話すだけで成功するんだ、あとは何もしなくていいんだ
一般的にコーチングは、理想を見つけ、その理想への旅路を歩み続けることを支援するツールです。
しかし、具体的な作用機序は明確にされておらず、コーチによって解釈が異なります。
- 理想を見つける支援:本心を見つけるための対話、価値観のワークなど
→ひとりだと他人軸の願望を理想だと勘違いする、真の理想を探し続ける - 旅路を歩み続ける支援:理想を目指し続ける支援、歩みを止める障害を乗り越える支援など
→ひとりだと現状維持バイアスに負ける、慣れた方法ばかりを用いる、障害の正体を認識できない
コーチングは世界的に認められている支援方法ですが、投資対効果については疑問視されることもあります。
そのため、今の自分が本当にその人のコーチングを受ける必要があるのかを、見極めなければなりません。
コーチング受講を考えるときは、なぜその人のコーチングが自分にとって有効なのかを理解するように努めてください。
また、コーチングを受講してからも、どうしたらその人のコーチングを十分に活用できるのかを考え続けましょう。
心構え⑤:好奇心をもってコーチングを受けよう
コーチングの目的は、理想を実現することです。
しかし、その原動力の本質は「自身や世界への好奇心」です。
コーチングを受けている間は、目標達成や理想の実現に急がないでください。
決めた計画を、決めた手順やタイミングで実行するだけなら、コーチングである必要はありません。
コーチングを受けるなら、「自分や世界を知るためのヒント」を得るために、計画や実行、宿題があるのだと捉えることをおすすめします。
- 目標達成や理想の実現に急ぐ:計画通りに行動することを重視する、目標達成が最優先
- 自分や世界を知ることを重視する:自分や世界を知るための目標/計画/行動だと捉える
コーチング受講におけるよくある失敗
ここでは、コーチング受講における失敗例についてお伝えしていきます。
ケース①:教わったほうが早かった
コーチングではなく、コンサルをつけてノウハウを学んだほうが早かった。
こういう失敗例は非常に多いです。
コーチングは理想や目標までのプロセス全体を支援するものであり、目先の課題を乗り越えるだけならその専門家に相談したほうが早い傾向があります。
- プロセス全体の支援:本当にそれが理想か?今の課題は何か?何から考え取り組むべきか?
- 目先の課題解消:躓いている課題を解消するための具体的な解決策は?
たとえば「ステップメールを書きたい」という課題なら、ステップメールの講師に依頼しましょう。
しかし、「怖くてステップメールが書けない」という抵抗感の解消や「孤児院の子供たちにも平等な学習環境を提供したい」という先にあるゴールまでの旅路を支えてほしいという場合は、コーチングを受講することをおすすめします。
ケース②:結局やりたいことが分からなかった
コーチングでは、本心を見つけることを支援します。
しかし厳密にいえば、本心である可能性が高いものを見つけるだけであり、それが本物かは確かめなければなりません。
やりたいこと探しにおいては、「やってみたいこと」を見つけ、それが「やりたいこと」であるかを検証することを支援するに留まるということです。
- やってみたいこと:今興味がありそうな、得てみたいこと、叶えてみたい状況やあり方
- やりたいこと:夢中になれること、本心から求めること、天職
コーチングを受ければやりたいことを見つけられるのではなく、コーチングはやりたいこと探しを建設的におこなうために支援を提供します。
ひとりで探すよりも見つかりやすくなる程度のものであり、魔法の杖のようにやりたいことを教えてくれるツールではありません。
ケース③:言われたことをしたのに変わらなかった
コーチングは基本的に何をすべきかを支持しません。
ただし、アクションプランや宿題と呼ばれる「気づきを日常で試すこと」を指定することがあります。
これは今解消したい課題をより深く知ったり、気づきを適用したりすることが目的です。
そのため、宿題だけをやっても目標達成できるわけではなく、計画の進捗は別物として考えて自分で考えて動く必要があります。
習い事感覚のように「言われたことだけをやる」という態度だと、コーチングはかえって理想の実現や目標達成を遅らせる原因になるでしょう。
ケース④:気持ちはラクになるが目標達成できなかった
セッションでは気持ちがラクになったが、目標達成はできなかったという悩みもあります。
この問題は主に次の2つが考えられるでしょう。
- コーチングが機能しなかった:コーチの技術が未熟、非効果的なセッション課題の選択
- 指定した期間で達成できない目標:現状と理想の距離が遠すぎる、時間や課題の量
いずれにしても、コーチングは目標達成を約束するものではありません。
目標達成するために不足しがちな要素を補うものであり、その要素が満たされているならば他の自己投資を優先したほうがよいです。
目標達成できなかったからコーチングは意味がなかったとは限りません。
また同様に、目標達成できたからコーチングに意味があったとも限りません。
コーチングは目標達成確率を高めるツールですが、万能薬ではないのです。
目標達成ができてもできなくとも、コーチングを受けている間は「コーチングを受ける必要性」について真剣に考え続けてください。
コーチングに関するよくある疑問
ここでは、コーチングを受ける際に疑問を持ちやすいことをお伝えしていきます。
疑問①:コーチとコンサルどちらをつけるべき?
コーチングとは別に、コンサルティングを受けるという選択肢もあります。
個人事業主界隈におけるコンサルとは、講師のような存在であり、やり方や成功手順を教えてくれます。
料金はどちらも高額であるため、特に初期の個人事業主はどちらを受講すべきかで悩むでしょう。
- コーチの役割:目標達成のプロセス全体の支援、目標の設定と管理、抵抗感の解消
- コンサルの役割:特定の方法やスキルの指導/伝授、専門的な疑問や課題の解消
それぞれ役割が異なるため、資金に余裕があるならばどちらも付けることをおすすめします。
しかし、資金が余裕にないのであれば、答えがある分野ならばコンサルに教わったほうがよいでしょう。
コンサルを受けたのに行動できなかったり、自分で試行錯誤をしなければならなかったりする場合に、コーチングを受講してみてください。
疑問②:コーチングの費用対効果ってどうなの?
コーチングの費用対効果については、さまざまな議論が生じています。
未だに決着がついておらず、今後も決着はつかない可能性が高いです。
なぜなら、コーチングは効果測定が困難であり、パラレルワールドを確認できる術がない限り想像の域をでないためです。
コーチング効果=コーチングを受けた未来-コーチングを受けたなかった未来
基本的にコーチングは自分の中にある答えを探し、それを外の世界に反映させる試みの支援です。
そのため、成果が出ても「コーチングに頼らなくても出せた成果だった」と考えられやすい傾向があります。
また、コーチングによる変化は、他者が感じ取れたとしても自身では感じづらい傾向もあり、なおさら「コーチングを受けてよかった」と感じることは困難です。
- コーチング支援の軽視:ひとりでも結果は同じだったと捉えやすい
- コーチング成果の感じづらさ:コーチングを受けてからの変化は実感しづらい
特定の課題を乗り越えるだけなら、誰かに教わったほうが早いことも多いです。
もしひとりで実現できそうなら、まずは自分だけでやってみたほうがよいでしょう。
「私にはどうしてもコーチングが必要なんだ」と思えない限り、コーチングの費用対効果は低く感じてしまいます。
コーチングを受ける際は、自分の理想/目標/計画を見ながら、「私ひとりでこれを実現/達成できるだろうか?」「今投資すべきはコーチングだろうか?」と自問自答してみてください。
疑問③:目標設定が嫌いだとコーチングは受けられない?
一般的に、コーチングでは目標設定をすることが求められます。
目標のないコーチングはただの雑談になりやすく、あってもなくても変わらない時間になりやすいためです。
ただし、どれほど厳密な目標を設定するかはコーチによって異なります。
「やりたいことを見つけたい」というふんわりした目標を推奨している人もいれば、「3カ月後にライターで30万稼ぐ」という厳密な目標でなければダメだと考えている人もいるのです。
もし目標設定が苦手な場合は、目標設定にこだわらないコーチを探してみてください。
たとえば「ライフコーチ」というジャンルのコーチングは、人生全体や自身のあり方と向き合うことを目的にしており、特定の目標に固執しない傾向があっておすすめです。
一方で「目標達成系コーチ」や「ビジネスコーチング」というジャンルのコーチングは、目標達成や進捗にシビアな傾向があります。
まとめ
コーチングは理想実現や目標達成を支援するツールです。
しかし、その支援内容は主に「自分を実験する」と「世界を実験する」を手伝うことにあります。
助言やアドバイス、技術的なフィードバックはできないため、それらを当てにするとコーチを十分に活かせなくなるでしょう。
- 自分を実験する:何が好きで嫌いか、どんな未来やあり方にときめくか、どうすれば自分が動くか
- 世界を実験する:どの行動をするとどんな影響を及ぼすか、欲しい結果を得るためにはどんな行動が必要か
あくまでコーチングは手伝いであり、お客様感覚や習い事感覚を持っているとまったく成果が出ません。
また、コーチングにおける宿題だけを実施していても、計画は停滞して目標や理想には一向に近づけません。
コーチングを活用するためにも、なぜ自分にはコーチングが必要なのかを明確にして、それをコーチと共有してください。
コーチと関係性を築き、コーチの活用方法を理解し、受講生としての責任を全うすることで、ようやくコーチングを十分に活かせるようになります。
コーチングへの自己投資に悩んだら、自力で実現できないかをまず検討し、無理そうなら複数の支援先を検討してみましょう。
自分にとって適切な支援先を見つけるには、「自分がうまく進めない理由」を明確にすることが重要であり、その理由がコーチングによって解消できるなら自分に合ったコーチを探すことをおすすめします。