現状に満足すると行動力が低下して、今のままでいいのかと不安になることがあります。
このとき、現状維持と現状離脱のどちらを選択すべきなのでしょうか。
この記事では、現状満足をする方法とそこからの前進方法についてお伝えしていきます。
現状に満足しているけどなんか苦しいと感じているときは、ぜひともここで紹介する情報を取り入れてみてください。
現状満足とは何か?
現状満足とは、今に不足感を抱かずに、わざわざ変わる必要性がないと捉えている状態のことです。
現状をベストまたはベターだと考えており、変化するリスクを冒してまで現状を変えようとは思いません。
- 現状不満:今への不足感がある、嫉妬心や欠乏感、現状維持への欲求<変化したい欲求
- 現状満足:今が十分満たされている、感謝や充実感、変化したい欲求<現状維持への欲求
自己受容と似たような概念ですが、現状満足は主に周りの環境に対してOKを出します。
現状に満足しているからといって、自己受容しているとは限らないことに注意してください。
- 自己受容:ありのままの自分を認める、受け入れる
- 自己肯定:今の自分にOKを出す、大丈夫だと信じる
- 現状満足:今の環境や状態に不足がないと考える、変化の必要性を感じない
現状満足の問題点
ここでは、現状に満足することのリスクについてお伝えしていきます。
問題点①:行動欲が失われること
現状に満足した人の多くは、何に対してもやる気が起きないことについて悩みます。
十分満たされている現状によって、変化することから得られるメリットを少なく感じ、行動動機が小さくなるためです。
- 現状満足からの変化への認識:得られるものが少ない、変わろうとするリスクが大きい
- 現状不満からの変化への認識:得られるものが多い、現状維持のほうがリスクが大きい
自分の欲へのアンテナが鈍感になっており、常に満腹のような状態です。
「何をしたいのか」「何が欲しいのか」が分からなくなり、生きる意味を見出すためにも、動機付けられるような壮大な目的と意義を求めるようになるでしょう。
しかし、壮大な目的や意義はそう簡単に見つかるものでもなく、描いては消してを繰り返して結局何も行動できないものです。
- 壮大な意義:世界平和につながる、自分の偉大さが伝わる、画期的な発明で世界が変わる
- 平凡な意義:興味があるからやってみたい、お金がないから稼ぎたい
現状満足の状態から行動欲を見つけるには、「欠乏欲求」だけではなく「実現欲求」にも焦点を当てることが必要です。
今までとは異なる欲求の見つけ方になるため、行動できるようになるまで時間を要する傾向があります。
- 欠乏欲求:自分にとっての危険を回避するための欲求
(例.お腹が空いたから食べたい、愛されていないから人気者になりたい) - 実現欲求:ワクワク感や使命感から生じる欲求
(例.興味があるからやってみたい、成長したい、他者貢献したい)

問題点②:偽りの現状満足をすること
偽りの現状満足とは、本心では満足していないのに、「私は満足だ」と自分に嘘をついている状態です。
「今がいい」と「今でいい」の違いであり、不足感を抱きつつもわざわざ変わるほどの必要性を感じられません。
- 今は嫌だ:現状不満、現状を「赤点」だと捉えて拒絶すること
→著しく点数が低いと考える - 今がいい:適切な現状満足、現状を「合格」だと認めること
→100点ではないと自覚している - 今でいい:偽りの現状満足、変化することを嫌って現状を「赤点ではない」と認めること
→100点だと思い込みやすい
偽りの現状満足は、「本心」ではなく「変化へのコスト」を理由に満足であると錯覚させます。
損失を回避するという目的を果たすための手段としての満足感であり、現状だけでなく未来に対しても変化を望まない傾向があります。
変わらないことへの言い訳や罪悪感、無力感などが頭を占め、「充実感」よりも「退屈感」が勝るでしょう。
- 言い訳:変化を望まず今で満足するから許してください
- 罪悪感:自分を裏切りつづけること、他者と比較して何もしていないことが苦しい
- 無力感:「がんばっても私には何もできない」と信じる
- 充実感:過ごしている日々から報酬感が生じる
- 退屈感:時間を浪費している感覚、日々から報酬感がほとんど生じない
現状への満足感が強いとき、それが適切な現状満足であるかを確かめてみてください。
偽りの現状満足である場合は、本心を無視させるブレーキと向き合うことをおすすめします。
- 偽りの現状満足への対応:本心は何か?望みを叶える行動を抑制しているブレーキは何か?
- 適切な現状満足への対応:未来はどうなっていたいのか?このままだと未来はどうなるのか?
例.偽りの現状満足
・恋人はいないけど、今のままでいい
→本当は恋人が欲しい。でも自分の時間も欲しくて決めきれない。
・テストで30点だったけど、今のままでいい
→本当はもっとよい点数を取って周りからチヤホヤされたい。でも私には才能がない。
・節約すれば今のままの低収入で生きていける
→本当はもっと思い出を作るためにお金を使いたい。でも新しい挑戦が怖い。

現状満足をすべきか?
現状満足は心に安寧をもたらしますが、すべてタイミングで現状に満足すべきとは言えません。
現状に満足した状態から行動欲を取り戻すには多くの時間を要し、がんばるべきタイミングで努力できなくなる恐れがあるためです。
現状への不満による瞬発力と逆境に対する粘り強さを活用したほうが、現実がうまく回ることがよくあります。
- 現状不満:不足感や不満感を補うことへの意欲、瞬発力と粘り強さがある
- 現状満足:ピュアなやりたいことへの意欲、際限のないエネルギーを生み出す
また、「現状に満足すべきだ」という強迫観念は、偽りの現状満足を錯覚させます。
欠乏感を視界から外し行動意欲を低下させるため、ますます状況が悪化する可能性が高まるでしょう。
- 現状不満:現状<期待
- 現状満足:期待<現状
- 偽りの現状満足:過小評価した期待<過大評価した現状<視界から外した本来の期待
現状満足は、しっかりと欠乏欲求と向き合った人だけがたどり着くべき地点です。
自分のなかにある不足感を満たそうともせずに満足感を抱くことは単なる妥協であり、偽りの満足感でしかありません。
ただし、現状のすべてに不満を抱くのでなく、部分的に現状満足をすることは大切です。
現状不満であるときは、徐々に現状満足の部分を増やすように行動を試みてください。
- 全体的な現状不満:恋人がいないから私の人生は全面的に不幸なんだ
- 部分的な現状満足:恋人はいないが仕事面は充実している。次は恋愛面にも力を入れてみよう
- 全体的な現状満足:欠乏感は単なる思い込みだった。私は現状で十分である。周囲への感謝の念が生まれる
- 未来に対する不満感:現状には満足しているが、未来もこのままではよくないと感じて行動意欲が高まる

偽りの現状満足を促す3つの態度
ここでは、偽りの現状満足を引き起こす態度についてお伝えしていきます。
偽りの現状満足から抜け出したいときは、ここで紹介する態度を改善してみてください。
態度①:惰性
惰性とは、目的もなく同じパターンを繰り返すことです。
肉体的・精神的な労力を最低限で済ませられますが、その繰り返しを何かにつなげようと意図していません。
「願望」よりも「現状のラク」を優先した態度であり、惰性を続けていくと「変化するためのコスト」を大きく感じるようになります。
例.同じパターンを繰り返す目的
・惰性的な繰り返し:考えるのがめんどうだから同じパターンを繰り返そう
・惰性でない繰り返し:スキルを上げるための同じパターンを繰り返そう(仮説の検証)
惰性を改善するには、目的をもって選択することを習慣づけるとよいでしょう。
現状の仮説の明確化や他の仮説作りなどで視野を広げ、「目的」「手段」「頻度」を決めてみてください、
- 目的:何のために
- 手段:何を
- 頻度:どれほど繰り返すのか

態度②:妥協
妥協とは、自分の望みを我慢して現状に甘んじることです。
妥協を繰り返すと、我慢することに慣れてしまい自分の望みを軽視するようになります。
変化する必要性を小さくさせ、「まぁ今のままでいいや」と本心を無視した現状維持を選ぶようになるでしょう。
例.妥協から作られる信念
・家族で旅行したい。でもお金がないからファミレスで我慢しよう
→旅行なんてバカがすること。お金をかけずに思い出を作れることが正義!
・起業して収入を上げたい。でも稼げる気がしないから会社員のままでいいや
→起業で成功する人は少数。安定している会社員こそ正しい!
妥協を繰り返すことの最大のリスクは、基準がどんどん下がっていくことです。
「堕落しても許されること」を身体が覚えてしまい、本心を叶えることへの抵抗感がより一層強まります。
落ちるところまで落ちやすく、最後には「今あるものだけで満足しようとする人生」にたどり着きます。
例.妥協慣れした人の特徴
・自己肯定感が著しく低い
・現状維持を選ぶ言い訳が上手
・堕落することへの不安や恐怖が小さい
妥協を改善するには、「不満と願望のリスト」を作ってみてください。
自分が見ないように蓋をしている感情や思考を明確にすることで、妥協が見える化されて現状を正しく認識できます。
妥協すべきか否かを深く検討する機会が作れるようになり、「こんなに妥協したくない」という意欲的な感情が強まるでしょう。

態度③:無関心
無関心とは、自分や周りを見ないようにして「今あるものだけで十分だ」と捉えようとすることです。
現状がベストであると信じるために、ポジティブなことへの関心を捨てて現状を肯定しようとします。
一方で、周りの不幸に関してはアンテナを張り、現状への満足感やお得感をより実感しようともします。
- 幸福への無関心:欲しくなって現状を変えたくなるから見ないようにする
(例.関心事を得た自分を想像して満足する、関心事を得る意味を検討して無意味だと断定する) - 不幸への関心:何もしない自分を肯定できるから積極的に見ようとする
(例.他人の不幸や失敗を観察してお得感を得る、下方比較して現状を肯定する)
無関心を改善するには、現状を肯定することへの執着を手放すことが重要です。
「不本意な部分もある」と現状を認識するとともに受容することで、前向きな関心を持てるようになります。
まずは自分に生じている感情や思考に関心を寄せて、満足していない部分もあることを認めてみてください。

現状満足するための方法
ここでは、現状満足の比率を高めていくための方法をお伝えしていきます。
満足①:現状を受容する
現状を受容するとは、今の良い部分と悪い部分を漏れなくありのままに受け入れることです。
具体的には、現状に対して次のような思考が生まれたら現状を受容していることになります。
- まぁ今はこんなもんか
- 今は最高ではないが最悪でもない
- 私にはまだこんなに選択肢が残っている(自由がある)
「満足を感じる部分」と「不満を感じる部分」を明確にすることで、人生全体への悪印象が払拭されます。
現状を悲観しすぎることがなくなり、部分的な満足感を認められるようになるでしょう。

満足②:過去の自分を認める
過去の自分を認めるとは、誤りだったと感じる過去の選択に折り合いをつけることです。
具体的には、過去の自分に対して次のような思考が生まれたら、過去の自分を認めているといえます。
- その背景ならその選択をしても仕方がない
- 過去の自分は過去の自分なりに全力だった
- もっと酷い選択肢もあったなかでまぁ及第点だろう
過去におこなった選択の責任は、現在の自分が取らなければなりません。
にもかかわらず、過去に責任転嫁し続けると、現状の不満を自分が解決すべき問題だと認識できなくなります。
「これからどうすべきか」よりも「なぜあんな選択をしてしまったのか」について悩むようになり、現状に対する否定的な態度が一層強まってしまうでしょう。
- 過去の自分への責任転嫁:あのとき選択を間違えたから私の人生は不幸なのだ。もうどうしようもない
- 現在の自分が責任を取る:たしかにあのときの選択は過ちだったかもしれない。しかしこれからどうするかは現在の私次第だ
過去の自分を認めるには、「結果に関わらずどの選択も全力で決断していた」と信じることが重要です。
また、その経験を教訓化して今後への活かし方を考えることで、過去の自分の過ちをよりポジティブに受け止められるようになります。

満足③:目標達成プロセスを実行する
現状満足するためのもっとも分かりやすい方法は、欠乏感を満たすことです。
今抱えている不満を満たすための目標を設定して、それを達成するプロセスを実行しましょう。
★目標達成のプロセス
1.不満を目的に言い換える
2.目的を達するための指針となる目標を設定する
3.現状と目標達成がつながる計画を立てる
4.計画通りに行動する
5.行動から得た情報をもとに「目標/計画/行動」を修正する
ただし、欠乏感を満たすときは、満たす必要性について定期的に検討してみてください。
すでに満たされているのに「満たされていない」と捉えていることがあるためです。
まずは少し満たしてみて、満たす必要性を検討しながら満たす量を調整しましょう。
- まったくない:満たすことの必要性を検討する前に少し満たしてみよう
- 少し満たされた:変化を実感しよう
- まだ足りない:さらに満たす必要があるのか検討しよう
- もう十分:他の欠乏感を満たす新たな目標を設定しよう

現状満足から前進するための方法
ここでは、現状満足により行動意欲が失われた状態から抜け出すための方法をお伝えしていきます。
前進①:延長線上の未来を想定する
現状に満足しているとき、現在から未来に焦点を移してみてください。
時代や年齢が変わる以上、永遠に今のままでありつづけることはできません。
その当たり前の変化を想定することで、現在と未来を区別できるようになります。
- ×:現状満足の状態は未来でも満足感を得られる
- 〇:満足感の基準は現在と未来とでは異なる
「現在の満足状態」と「未来の満足状態」を隔てるギャップが新しい目標の候補になります。
もしも現状を維持した未来を望む場合は、以下のことを目標にするとよいでしょう。
- 現状を維持するために必要な努力
- 現状を変えてしまう危機を回避するための対策

前進②:望んでいる未来を言語化する
自分の中に潜むピュアな願望を言語化することは、新たな行動動機につながります。
欠乏欲求ではなく実現欲求を見つけるには、次のような行動を試してみてください。
- 視野を広げる:人と出会う、物語を味わう、新たな体験をする
- 現状を点数化する:現状は100点満点中何点?さらに10点を加点するには何が必要?
- 制限思考を解除する:もしも何をやっても成功するとしたら何をしたい?
- 行動する自分を許す:新たな願望は「現状が不満であること」の証明にはならない
「望んでいる」と判断するための閾値を小さくすることが、実現欲求を見つけるための秘訣です。
自分が持つ願望に敏感になり、その大きさに関わらずその願望を行動に移せる態度を身につけてみましょう。
- 閾値が大きい:心の奥底から実感できる願望でないと願望だと認められない
- 閾値が小さい:直感的な軽い願望を願望だと認められる

前進③:望む未来を叶えられると信じる
自分の願望が明確になっても、それを叶えられる自信がないと行動意欲は湧きづらいです。
失敗する未来を想定すると「挑戦してもどうせ無駄」と感じてしまい、現状維持から抜け出せなくなります。
★行動意欲に関わる要素
・重要性:自分にとって大切な行動である
・緊急性:今すぐに行動しないと危険である
・自己効力感:その目標を達成できる自信がある
ただし、「願望の実現=成功(結果)」ではないことに注意してください。
「結果が大切な願望」と「生き方が大切な願望」に大別され、叶えられることへの自信は特に前者が必要とします。
- 結果が大切な願望:その結果を得られなければ意味がない
→努力した自分がその結果を得られそうにないなら目標を変えた方がよい。 - 生き方が大切な願望:その結果を得ようとする人生でありたい
→どんな目標や目的に人生を費やしたいか。成功を目指すこと自体が報酬になる。
いずれの願望であっても、本気で成功を目指すべきです。
しかし「結果が大切な願望」であるならば、求めている結果を得られる可能性についてよく検討しましょう。

まとめ
現状満足とは、欠乏欲求が満たされ行動動機として機能しづらくなった状態です。
この状態から新たに行動をするには、実現欲求への感度を高めて「ワクワク感」からの行動ができるようになる必要があります。
ただし、「現状満足」と似た感覚に「偽りの現状満足」が挙げられます。
自分の基準を下げて妥協している場合は、抱えている不満と向き合う機会を設けてみてください。
- 現状不満:現状が期待を下回っていると認識した状態
- 現状満足:現状が期待を超えていると認識した状態
- 偽りの現状満足:期待を抑えることで満足感を得ている状態
現状満足または偽りの現状満足の状態のとき、現状維持をするか現状離脱をするかは未来を想定することで検討しましょう。
延長線上の未来を考え、延長線上も降伏であり続けられるなら、そのレールに乗り続けることが重要になります。
しかし、もし延長線上の未来では物足りないと感じたら、どうしたらそのギャップを埋められるかを模索して試行錯誤することが必要です。
現状満足により虚しさを感じる場合は、コーチングやカウンセリングなどの内省の専門家に支援してもらうことをおすすめします。
自分の不満や欲求と徹底して向き合う期間を作れるとともに、悩む時間を短縮できるため、より早く納得できる人生にすることへ舵を切れるはずです。
