行動力

仕事と割り切ることは悪いのか?善悪の基準と適切に割り切るためのコツ

「仕事なんだから仕方ないんだ。不満を持つのがおかしい…」
「お金のためだけに働いているのだから最低限のことだけをやればいい…」

上記のように仕事として割り切ることには、メリットとデメリットがあります。

ストレス耐性が高まるという恩恵もありますが、継続力や向上心の低下という危険性もあり、割り切り方には注意が必要です。

この記事では、仕事として割り切る方法についてお伝えしていきます。

割り切ることでかえって苦しんでいる場合は、ここで紹介する境界線やコツを取り入れてみてください。

なぜ仕事と割り切ろうとするのか

そもそもなぜ私たちは仕事として割り切ろうとするのでしょうか。

ここでは、仕事と割り切る理由についてお伝えしていきます。

理由①:がっかりしたくないから

期待が裏切られると、がっかりして強いストレスを感じるものです。

有能な上司、刺激的な挑戦、成長できる環境、深い関係を築ける仲間などの期待を持って働きはじめますが、たいていはこれらの期待は叶いません。

そして期待を持つと苦しむことになると学習して、自己防衛のためにも期待を手放す手段として「仕事だから」と割り切ろうとするのです。

  • 期待あり:起業したら自由に楽しく働けるだろう!
  • 期待無し:仕事なんだから楽しむ必要はない、本気になる必要はない

「仕事に期待してはならない」という学習は、自らが体験しなくても身についてしまいます。

たとえば、親が苦しそうに働いている姿や、SNSでのネガティブな仕事の感想などを日々目にすることで、「仕事はろくでもないものだ」と固定観念が作られてしまうという具合です。

  • 親からの影響:働くって苦しいことなんだ、つまらなそう
  • SNSからの影響:上司や顧客はろくでもない人間ばかりだ

いずれにしても、働くことへのネガティブイメージが強まるほど、自己防衛のために割り切ろうとします。

仕事として割り切れない場合は、転職や他者への働きかけなどによって自分を守ろうとするでしょう。

理由②:割り切らないと続けられないから

仕事は多大なストレスを生むものです。

継続するにはそれ相応の動機が必要になりますが、それを誰もが見つけられるわけではありません。

そうしたときに、釣り合いを取るための手段として、仕事と割り切ることを用います。

  • ストレスと釣り合う動機がある:出世するためにがんばろう!
  • ストレスと釣り合う動機がない:仕事なんだから苦しむのは当然だ..

ストレスを受容する試みであり、抵抗せずに流す態度です。

いちいち抗おうとしなくなるため葛藤が継続せず、もがく苦しみからは逃れやすいでしょう。

  • ストレスに抵抗する:なんで上司はあんな酷い人間なんだと怒りを持ち続ける
  • ストレスに抵抗しない:まぁ人間なんてそんなものかと受け流す

こうした反応しない態度は、マインドフルネスによって身につけられます。

「動機を増やす」のではなく「ストレスを小さくする」という手法を用いたいときは、試してみることをおすすめします。

★視座が高まるとストレスが減る
当たり前と感じていることからはストレスがほとんど生じません。
差分を感じ取れないため、思考や感情が揺らがないためです。
「仕事だしな」という割り切りは、「大人」や「社会人」の役割として当たり前だと認識する行為です。
一種の諦めでもありますが、そこにはその役割としてのプライドも含まれており、視座を高める行為だとも考えられます。
・視座が低い:1日8時間も仕事するの!? なんで客にペコペコしなきゃならないの!?
・視座が高い:1日8時間の仕事とか当たり前じゃん、お客様の人生を好転させるための仕事だよね

理由③:目的以外を無駄だと考えているから

行動には目的が伴います。

基本的に1つの行動に対して複数の目的を持ち、優先順位をつけることで採用すべき手段や態度が変わります。

例.よくある働く目的
・お金を稼ぐ
・社会貢献する
・自己成長する
・ステータスを得る
・パートナーを見つける
・社会から浮かないようにする
・親に嫌味を言われないようにする

「お金さえ得られれば他はなんでもいい」という割り切りは、この優先順位の線引きによるものです。

複数ある目的を「狙うもの」「狙わないもの」に分類して、その絞った目的を得るためだけの手段として仕事を捉えます。

目的を絞るほど、効率の調整がしやすくなります。

たとえば「お金」だけを目的にするならば、「お金につながらないこと」は無意味に感じ、「お金につながること」は苦痛でも取り組むべきだと考えるようになるでしょう。

仕事と割り切ることの3つの危険性

仕事と割り切ることにはリスクも伴います。

ここでは、割り切ることで生じる代表的なリスクについてお伝えしていきます。

リスク①:報酬感を得づらくなる

報酬感とは、働くことで生じるポジティブな感情のことです。

前進するエネルギーとなり、ストレスの解消や抑制に役立ちます。

例.報酬感が生じやすいきっかけ
・感謝される
・相手が喜ぶ
・成長を実感する
・関係性が深くなる
・目標が達成される

仕事と割り切りすぎると、報酬感を得るための主体的な行動が減少します。

目先の仕事だけに焦点を合わせ、働くことで生じた結果を見落とすようになるでしょう。

  • 明確に割り切る:お金のために働く→お金をもらうのは当然の権利
  • ほどよく割り切る:お金のためにも働く→自分の働きが上司に評価されたことに気づける

また、仕事から報酬感を得ることを許可できなくなり、ポジティブ感情にかえって苦しむことがあります。

目的以外から報酬を感じることは手抜きや甘えだと捉え、より一層自分にストイックさを求めるようになります。

  • 報酬を許可:成長するためだけど仕事が楽しくなってきた
  • 報酬を否定:成長するためなんだから仕事を楽しむなんてありえない

リスク②:不満を放置しやすくなる

仕事と割り切ると、「仕事だから」と不満があることを受け入れるようになります。

このとき、「コントロールできない不満」だけでなく「コントロールできる不満」までも受容してしまうことに注意が必要です。

  • コントロールできる不満:自らの行動を変えることで不満を取り除ける問題
  • コントロールできない不満:自らの行動を変えても不満を取り除けない問題

不満の放置は、仕事の生産性や他者からの評価が低下することにつながります。

また、うまくいかないことに自己効力感が低下したり、抱え込むストレスが増大して精神に深いダメージが生じたりする危険性があるでしょう。

「仕事だから」と割り切ることは、問題に抗わないための有効な方法です。

しかし、すべての問題が時間で解決するわけではなく、抱え込みすぎると自身の崩壊を招きます。

リスク③:釣り合いを取りづらくなる

仕事と割り切ることで行動と目的の釣り合いは取れますが、その効能は時間経過によって弱まります。

私たちは報酬感に慣れやすく、現代には選択肢が無数に存在するためです。

  • 報酬への慣れ:たった30万円のためにこんな苦しい思いをするのはおかしい!
  • 無数にある選択肢:30万円を稼ぐならもっとラクな方法があるはず!

割り切ろうとしても均衡が取れなくなったとき、極端な行動を採用しやすいことに注意してください。

今まで我慢してきたことが積み重なっており、時間経過によって釣り合いがさらに崩れているからです。

  1. 初期:お金のために働こう
  2. 均衡が崩れる:なんでこんなに苦しいんだろう
  3. 割り切りにより均衡を保つ:お金を得るためなんだから仕方がないか
  4. 時間経過により均衡が崩れる:こんな金額のためにがんばるなんて割に合わない!
  5. 新たな行動によって均衡を保つ:こんな職場は嫌いだ!転職してやる!

行動と目的の均衡を保つ方法は、「割り切り」以外にも「行動の抑制」や「意味の調整」などが挙げられます。

割り切りは葛藤の先延ばしという側面もあるため、他の方法も併用することをおすすめします。

例.釣り合いを取ろうとする行動
・離脱:転職して効率の高い働き方を探る
・交渉:苦しみと釣り合う報酬を要求する
・代償:苦しみに釣り合う報酬を用意する(不倫、いじめ、横領など)
・割り切り:仕事だから仕方がないと無理に納得させる、ストレスを抑制する
・行動の抑制:報酬を固定的と捉え、その報酬に見合うだけの行動に抑える
・意味の調整:苦しみに足る行動理由(成果物)を探すようになる

仕事と割り切ることの善し悪しの境界線

ここでは、仕事として割り切ることの善し悪しの基準についてお伝えしていきます。

境界線①:その期待は手放すべきものか?

仕事として割り切るということは、自分が持っている期待を手放すということです。

感謝されたい、成長したい、ラクをしたいなどの期待を手放して、「仕事だからな」と片づけて期待が裏切られないようにします。

たしかに無駄な期待は自分を苦しめる元凶ですが、無駄だと決めつけている基準は確かめるべきでしょう。

  • 本当に無駄な期待:みんなにチヤホヤされたい、私の言うことに従ってほしい
  • 本当は無駄ではない期待:自分も他者も成長できる、没入して楽しめる環境を作れる

仕事だからと割り切っても苦しいなら、自分が手放そうとしている期待を探してみてください。

自分が妥協していることをリスト化することで、心のうちに秘めている期待を言語化できます。

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境界線②:どの地点の未来に向かって進んでいるか?

仕事として割り切る人によくある傾向として、刹那的な生き方になっていることが挙げられます。

今生きるための思考であり、数年先の未来については目を瞑ろうとしているのです。

  • 目先の未来に向かっている:今の仕事に耐えていればいつかラクになるだろう(惰性)
  • 遠くの未来に向かっている:将来〇〇を実現したいから今の仕事に耐える必要がある

人生のレールが理想につながっているならば、刹那的な生き方をするための割り切りは有効になります。

しかし、もし現状維持の未来に納得できていないのであれば、まずは理想の目的地と現状をつなげることに取り組んだ方がよいでしょう。

仕事と割り切っているならば、「自分はこのままだとどうなってしまうのか」を明確にしてみてください。

その未来に満足できているならば、今の割り切りを善いものと判断してよい可能性が高いです。

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境界線③:自分や周囲の人たちは幸せになっているか?

仕事と割り切ることによる影響を確かめることで、その割り切りが善いものかを判断できます。

影響を確かめるための情報源として、以下のことについて調べてみてください。

  • 自分への影響:感情、ストレス、健康状態、ポジティブとネガティブの比率
  • 他者への影響:関係性、私への感想、行動の変化(顧客/同僚/家族/友人など)

仕事と割り切ることで自分の心が一時的にラクになっても、他に対して広く悪影響を及ぼしている可能性があります。

たとえば、「顧客がお金に見える」「部下を駒として捉える」などのように、仕事と割り切ることで働くことへのマインドが崩れてしまうような具合です。

仕事の割り切り方で影響する範囲や質、大きさが変わります。

よく周りを見渡し、その割り切り方の影響を把握して、よりよい割り切り方になるように調整してみましょう。

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上手に割り切るための4つのコツ

ここでは、仕事を上手に割り切るためのコツについてお伝えしていきます。

コツ①:視野を広げる

仕事と割り切るとは、視野を絞るということです。

しかし、その絞り方が極端になりやすいため、含めるものと除外するものを検討してみてください。

例.よくある極端な視野の絞り方
・最低限の業務:お金になるから必要
・同僚との関係性:お金にならないから無駄
・顧客との関係性:購入してもらうまでは必要、その後は無駄
・今後のスキルの成長:成長しても収入が対して上がらないから無駄

「直接的に目的と繋がるもの」だけではなく「間接的に目的と繋がるもの」も把握しましょう。

直観的に無駄だと認識しても、実は重要なものだったということがよくあります。

自分ひとりではその判断に偏りが出やすいため、その選別は先輩などの他者とおこなうことがおすすめです。

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コツ②:目的を精緻化する

目的を精緻化するとは、働く理由をもっと明確にすることです。

お金のためだけに働いている人は決して多くありません。

しかし「お金のために働いている」と直観的に感じていても、実際は「よりよく生きるため」であり、その定義は人によって異なります。

  • 直観的な目的:お金のために働いている
    →給料を貰うだけでは物足りないなら精緻化が必要。
  • 本当の目的:目的に複数の要素が含まれていることを理解している状態
    →現状にある程度満足でき、よりよくする方向が分かり前向きな状態。

働く目的が精緻化されると、仕事をすることの価値が高まり、粘り強さが生まれます。

仕事でのあり方も明確になり、振る舞いや仕草、思考や行動などのすべてが一転するとともに一貫性を持つでしょう。

例.働く目的によるあり方の違い
・お金のために働く:出勤すれば給料がもらえるため、横柄な態度でも真摯な態度でも目的を果たせる
・楽しむために働く:自分にとっての楽しいを最大化するための振る舞いや試行をするようになる
・起業するために働く:準備期間として成長や人脈作りに効果的な振る舞いや思考をするようになる

目的を精緻化するには、自分が本当に求めているものを探求することが必要です。

「どうなりたいのか」「どうありたいのか」を深く理解することで、仕事における本心が明確になります。

理想をより具体化するためのヒントは自分の感情であり、主にネガティブな感情や思考です。

まずは、仕事と割り切っている自分の感覚をよく観察して、今抱いている違和感を探ってみてください。

  • ポジティブ感情:嬉しい、楽しい、ワクワクする
  • ポジティブ思考:もっとやりたい、確かめたい、前に進みたい
  • ネガティブ感情:絶望、恐怖、苛立ち、嫉妬
  • ネガティブ思考:もう嫌だ、早く年金生活を送りたい、なんで私ばかり

★経験を積むほど動機は変化する
最初はお金のために働いていても、報酬感を受け取ることで仕事の目的は変動します。
経験することによって、成長すること、協力することなどの当初の目的以外も動機になり得るということです。
ただし、経験とともに動機として機能しなくなることもあります。
挑戦することが楽しかったのに、歳を取ってからは保守的になる人が多いのは動機の変動によるものです。

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コツ③:悩まないことを決める

割り切ることの最大のメリットは、そのことについて深く考えなくなることです。

「仕事だしな」で流せるため、過剰なストレスを生じなくなります。

  • 仕事と割り切る:「仕事だしな」「社会人だしな」とストレスを感じても受け流す
  • 仕事と割り切らない:ストレス源に対していつまでもイライラを募らせる

ここで重要なことは、「悩まないこと」と「悩むべきこと」をある程度区別したほうがよいことです。

全てに対して割り切ろうとすると、解消できるストレスまでも抱え込むようになり、次第に精神を蝕んでいきます。

  • すべて悩む:些細な問題についてもどうにかしようと抗い過剰なストレスを抱え込む
  • すべて悩まない:問題を一切解決しないためストレスが積み重なり大きな問題を引き起こす

問題に遭遇したら、「手放す」「解決する」「保留する」のいずれかに分類してみてください。

「手放す」と「保留する」については悩むことをやめて、「解決する」に分類したら徹底的にリソースを割いて最短で解決させましょう。

ただし、「保留する」に分類したものは、次に検討する日付を決めておくことが大切です。

  • 手放す:一度きりの問題、解決が困難なもの
  • 解決する:今後何度も生じる問題であり、解決可能でなもの
  • 保留する:一定期間現状維持で試したいもの、解決したくても今はできないもの
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コツ④:働くことへの信念を整える

「仕事だから仕方がない」という割り切りは、一種の妥協でもあります。

妥協をする理由はさまざまですが、自身の信念による割り切りは解決できる問題を抱え込む原因の可能性が高いです。

意欲的に働ける状態になるためにも、自分のあり方を規定している信念について検討してみてください。

例.仕事を妥協する信念と影響(「仕事だから仕方がない」と結論付ける信念)
・苦しまなければ稼げない:苦しい状態をよしとする
・仕事は長時間労働であるべき:長時間労働が目的化する
・楽しい感覚を仕事で抱いてはならない:報酬感を幅広く受け取れなくなる

「仕事は楽しくて当たり前だ」という「仕事は大変で当たり前だ」とは真逆の信念を持つことがあります。

仕事への大きな期待は始める動機としては優秀ですが、現実とのギャップにより挫折率を高めます。

「仕事と妥協する信念」だけではなく「仕事を特別視するような信念」にも注意して、いずれも自分にとって合理的になるように挑戦するようにしましょう。

例.仕事を特別視する信念と影響
・ラクでないと不幸だ:多忙感や苦境を不幸だと捉えやすくなる
・ラクに稼げる方法があるはず:短期的に効果的な100%の成功方法を探すようになる
・仕事なんだから楽しくあるべき:楽しくない作業を毛嫌いするようになる
・仕事なんだから色々教われるべき:答えを教われない環境に適応しづらくなる
・仕事なんだから給料が支払われるべき:対価を支払われるのが当然だと考えるようになる

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まとめ

仕事と割り切ることは有用ですが、それが悪影響を及ぼしている可能性もあります。

「仕事だから仕方がない」と唱えたときの、自身の感覚や実際の影響によく目を向けてみてください。

日常が暗いものに感じるのであれば、徐々にでもその割り切りを変容させたほうがよいでしょう。

今の日常が今後何年も続くことを前提にして、今一度延長戦の未来について検討してみることをおすすめします。