重要なことを選ぶとき、その判断基準となるものが「本当の気持ち」です。
自分が最も大切にしたい欲求を見つけることで、前向きなエネルギーによる選択ができるようになります。
しかし、何が本当の気持ちなのかを見つけることは簡単ではありません。
悩めば悩むほど何を大切にすべきかを見失い、そのときの直感や感情で選んで後悔したことがある人は少なくないでしょう。
この記事では、自分の本当の気持ちを見つける方法についてお伝えしていきます。
大切な決断をするときは、ここで紹介する情報を取り入れてみてください。
自分の本当の気持ちとは何か?
一般的に言われる「本当の気持ち」とは、心の奥底にある根源的な欲求のことです。
浅いか深いかの問題であり、核心的な気持ちが本当の気持ちです。
- 浅い欲求:うわべの気持ち、衝動的な感情
- 深い欲求:核心的な欲求、広い視野による欲求
よくある勘違いですが、ポジティブかネガティブかは本当の気持ちであるかとは関係ありません。
むしろ、1つの願望に対してそれぞれの本当の気持ちがあり、それらを明らかにすることで判断を下しやすくなります。
ポジティブもネガティブも本当の気持ちの一部であるため、どちらも受け入れ大切に扱うようにしましょう。
例.起業するか否か
・浅い願望:お金が欲しいから起業したい
・深い願望:本当は家族に安心してほしいからお金が必要
・浅い恐怖:失敗するのが怖いから起業を選べない
・深い恐怖:本当は家族に見捨てられることが怖くて起業を選べない
本当の気持ちの活用場面
そもそもなぜ、直感ではなく本当の気持ちを見つける必要があるのでしょうか。
ここでは、本当の気持ちの活用場面についてお伝えしていきます。
活用①:方向性を見定めるため
後悔の少ない選択をするには、本当の気持ちを見つけることが有効になります。
何を利益とするかは、その人が持つ本当の気持ちによって変動するからです。
例.この相手と付き合うか否か
・浅い欲求:この人と付き合えば自慢できそう!
・深い欲求:この人となら楽しい学生生活を過ごせそう!
浅い欲求を重視した選択は本当に欲しいものを見失わせて、後から強い後悔する原因になります。
すぐに手に入る安心や喜びが得られる選択肢では、短期的には満たされても長期的には不幸になりやすいでしょう。
例.挑戦するか否か
・短期的な安心:リスクを冒したくないから挑戦しない
・短期的な喜び:現状から逃れられるために挑戦しよう
選択肢とは、目指す目的地に近づくための手段の候補です。
どの目的地を目指すかを見極めるためには、自分の本当の気持ちが重要な手掛かりになります。
どの選択をしようかと悩んだときは、「そもそも何を実現したいのか」という目的となる本当の気持ちを明確にしてみてください。
活用②:スピードを加速させるため
目指す方向性が定まっていても、その過程ではさまざまな感情や思考がブレーキになります。
このブレーキはたいてい漠然としたものであり、具体化することで取り除かれる傾向があります。
★挑戦の過程を妨げるブレーキ
・不安:これで上手くいくのかな
・恐怖:失敗したらどうしよう
・衝動:めんどくさい、なんか嫌だ
感情や思考を具体化するには、ブレーキをかけている本当の気持ちを明らかにすることが有効です。
核心的な恐怖を見つけることでやるべきことが明確になり、気持ちに折り合いをつけられるようになります。
例.挑戦が怖い
・浅い恐怖:失敗したくない
・核心的な恐怖:失敗すると周りからバカにされて自分の居場所がなくなる
・取り組むべきこと:周りとの関係性を築く、人間関係の断捨離
夢や目標、理想への歩みが止まったら、自分がなぜブレーキをかけているのかを検討してみてください。
そこにある本当の気持ちを見つけることで、スピードを加速させるためのアイデアが生まれます。
本当の気持ちを見つける3つのステップ
ここでは、自分の本当の気持ちを見つけるための3つのプロセスについてお伝えしていきます。
ステップ①:問いをつくる
本当の気持ちを見つけ出そうとすると、思考が進まなくなったり、あらぬ方向に逸れてしまったりします。
そのため、まずは次の2つの問いを作りましょう。
- 答えを出したい問い:最終的に出したい答えにつながる問い、ゴール
→例.今日の夕飯は何を食べたいか? - 引っ掛かりとなる問い:答えを出しやすくする具体化された問い、最初の一歩
→例.私は今日の夕飯でカレーを食べたいか?
★問いの構造
問いは「対象」×「疑問詞」で構成されています。
この2つの要素をいじくりまわして、問いを作ってみてください。
・対象:どこに焦点を当てるのか、主語や動詞
・疑問詞:5w3h(いつ、どこで、だれが、何を、なぜ、どのように、いくら、いくつ)
ステップ②:答えを出し掘り下げる
引っ掛かりとなる問いに答えを出したら、その答えをさらに掘り下げていきます。
感情や感覚をヒントに、出した答えが深いのか浅いのかを判断しましょう。
特に「期待」と「恐怖」に焦点を当てることで、思考が奥に進みやすくなります。
例.今日の夕飯は何を食べたいか
・最初の一歩:今日はカレーを食べたいか?
・期待①:夕飯でどんな感情を味わいたいのか?
・期待②:そもそもなぜ今日の夕飯に悩んでいるのか?
・期待③:最高の夕食だったと分かるきっかけは何か?
・恐怖①:カレーを食べるとどうなってしまうのか?
・恐怖②:そもそも何を恐れて今日の夕飯に悩んでいるのか?
・恐怖③:最悪の夕食だったと分かるきっかけは何か?
ステップ③:答えを検証して確かめる
核心的な本当の気持ちを見つけたら、その信憑性を検証していきます。
内省による答えは仮説でしかなく、実際に行動してみない限り本物かどうかが分からないためです。
例.今日の夕飯は何を食べたいか
・本当の気持ち:前向きになれるようなリフレッシュする体験をしたい
・検証:普段一緒に食事しない人と普段訪れないような高級店で飲食する
・結果①:新しい刺激を得られてやる気になった。私は心機一転できるような時間を求めていたんだ
・結果②:確かにリフレッシュはできた。でも満足しなかったらから本当に求めていたのはこれではなかったのだろう
本当の気持ちを見つけたら、検証するための行動も合わせて実施してみてください。
ただし、行動に伴うリスクが大きい場合は、検証すべきことをより具体的にして小さく挑戦できるようにしましょう。
例.起業するか否かにおける検証行動
・リスク大:いきなり全財産を投資して会社を作る
・リスク小:小さく役に立つスモールビジネスをおこなって自分が喜べるかを検証する
本当の気持ちを見つける思考方法5選
ここでは、自分の本当の気持ちを見つけるための思考方法についてお伝えしていきます。
「ステップ②:答えを出し掘り下げる」のタイミングで取り組んでみてください。
もしも自分1人では思考が行き詰まる場合は、コーチングやカウンセリングを受けてみるとよいでしょう。
方法①:理想から逆算する
理想とは、制限のない状態で自分が本当に求めるもののことです。
手前からではなく奥から考える思考であるため、深い望みを言語化するときに有効な方法です。
- 手前から考える:今日はどんな休日にしようかな
- 奥から考える:一日の終わりにどんな感情を感じていたいかな
理想を描くには、「迷っている選択」に対する最高の状態を想像することが役立ちます。
そして、「それがなぜなのか」「長期的に見て幸せなのか」と信憑性を検証していくことで、自分の本当の気持ちを見つけられるでしょう。
例.夫婦けんかをしたときの対応
・目先の理想:論破して屈服させたい(衝動)
・長期的な理想:10年後も仲のよい夫婦でありたい(願望)
・理想からの逆算:10年後も仲のよい夫婦とはどんな状態か?そのためには何をすべきか?
方法②:否定形で考えてみる
ポジティブよりもネガティブな思考のほうが得意だという人がいます。
そういった傾向の人は、最高の未来を描くよりも、最悪の未来を描いたほうが自分の本当の気持ちを見つけるヒントが得られやすいです。
例.転職するか否か
最高の未来:理想の転職ができたとき私は何を得ているのか?
最悪の未来:このままだとどんな最悪の未来が訪れるのか?
「何を選びたいか?」という質問で行き詰まったときは、「何を選びたくないか?」と視点を変えてみてください。
そして選びたくない理由や目的を掘り下げていくことで、避けたい最悪の未来や、本当は求めている最高の未来を見つけられます。
★「なんでもいい」という答え
「何を食べたいか?」のようなオープンな質問をすると「なんでもいい」と答えたくなるものです。
しかし、実際になんでもいいわけではなく、パッと思いつかなかったり、選択肢が多すぎて思考が進まなかったりという状態である可能性があります。
「なんでもいい」と感じたら、最高の未来と最悪の未来を想像してみてください。
そのためのとっかかりとして、適当な選択肢を選んで「それでもいいのか?」と検討してみるとよいでしょう。
1.役に立てるならターゲットは誰でもいい
2.小学生でも、犯罪者でも、おじいちゃんでもワクワクできそうか?
3-1.このなかでもっともワクワクしたターゲットは誰か?
3-2.このなかでもっとも嫌だなと感じたターゲットは誰か?
4.善し悪しの境目にはどんな基準がありそうか?
方法③:「でも」を掘り下げる
何かを選ぼうとするときに、「でもなぁ…」とブレーキが働くことがあります。
この「でも」とは理想通りではないことへの抵抗感であり、本心を見つけるためのヒントです。
例.SNSマーケティングに挑戦してみる
・でも①:やっても無駄だろう→失敗したら得られるものがない
・でも②:費やす時間が限られている→自分の時間が失われてしまう
・でも③:稼げても幸せになれないだろう→この目標に意味はない
「でも」を見つけたら、「本当は…がいい」という答えが出るまで掘り下げてみてください。
「でも」を生み出す想定する未来やそこにある「不安・恐怖・願望」を明らかにすることで、本当の気持ちが見つかります。
例.旅行が億劫
・旅行をしたい。でも移動が面倒くさい
→移動がめんどくさいと感じさせる原因を突き止める
・旅行は嫌だ。だって移動がめんどくさいから
→まずは「旅行が嫌」なのか「移動が嫌」なのかを突き止める。
方法④:「もしも」で想像する
自分の気持ちがよく分からないときは、「もしも」の状況を想像してみてください。
実際のイメージをすることで感覚や感情が分かり、本当の気持ちを見つけるヒントになります。
例.友達とけんかしたときの対応
・もしも、明日その友達が転校してもう二度と会えなくなるとしたら?
・もしも、その友達との話を自分の子供にする必要があるとしたら?
「もしも」を想像するときは、極端な状況を設定することが重要です。
自分の気持ちを見失わせる細々とした事情や制約が吹き飛ぶような、ありえない状況を想像してみましょう。
例.本当はなにをしたいのだろうか
・もしも、お金や時間が無限にあったら何をするだろうか?
・もしも、何に挑戦しても100%成功するとしたら、何をするだろうか?
・もしも、今が十分に幸せだと感じている未来があるとしたら何をしているだろうか?
・もしも、最悪の未来からタイムスリップしてきたとしたらこれから何をしようとするだろうか?
方法⑤:「最高のA」と「最悪のA」を明確にする
理想的な未来はあるけれど、その未来が漠然としていてやる気が出ないことがあります。
そのような場合は、「最高のA」と「最悪のA」を明確にしてみましょう。
例.起業して年商1千万円稼ぎたい
・最高のA:年商1千万円稼いだときの最高にうれしい状態とは?
・最悪のA:年商1千万円稼いだとしても最悪な気分を味わっている状態とは?
・本当の気持ち:私はお金を稼ぎたいのではなく自分の存在証明をしたいのだ
分かりやすい指標による夢や目標を実現しても、かならずしも幸福になるわけではありません。
何をもって幸せを感じるかは人それぞれが持つ価値観によるものだからです。
夢や目標を実現したとき、それでも不幸になる状況とはどのようなものかを想像してみてください。
自分にとっての本当の幸せを炙り出すことで、本当の気持ちがどこにあるのかを把握できるようになります。
★ワクワク感を数値化してみよう
夢や目標を考えるとき、ワクワク感が高いほど本心である可能性が高くやる気も湧いてきます。
しかし、感情の大小を測ることは難しく、直感だけではワクワク感の有無しか分かりません。
感情の大小を測るには、「比較すること」と「数値化すること」の2つの方法が挙げられます。
比較よりも数値化のほうが気づきを得やすいため、基本的には数値化して検討するのがおすすめです。
・比較する:お寿司よりも焼き肉を食べたい
・数値化する:焼き肉を食べることへのワクワク感は60点ぐらい。あと10点上げるとしたら何が必要だろうか?
本当の気持ちを見失わせる要因5選
自分の気持ちなのに、なぜ見つけることが難しいのでしょうか。
ここでは、本当の気持ちを見つけづらくする要因についてお伝えしていきます。
要因①:制限思考
制限思考とは、自分の願望を小さく抑えようとする前提条件のことです。
「欲しいor欲しくない」ではなく「できるorできない」と現実的に考えてしまい、本心とは異なる思考に逸れてしまいます。
★よくある制限思考
・お金:お金がないから〇〇しかできない
・時間:時間がないから〇〇しかできない
・自己効力感:実力がないから〇〇ぐらいが妥当だろう
特に自分事では現実的に考えようと制限してしまい、本当の気持ちを見失わせます。
そのため、「本当の気持ちを見つけたい」と「現実的な落としどころを見つけたい」を区別してから考えるようにしてみてください。
本当の気持ちを見つけるために制限思考を解除するときは、「方法④:もしもで想像する」の思考方法をおすすめします。
★制限思考を取り除く方法
・笑う:不安や恐怖による制限の影響が低下する
・AIの活用:自分の考えに含まれる制限思考の指摘、突飛なアイデアの組み合わせ
・酔っぱらう:前頭前野の働きが抑制されて自由な発想をしやすくなる
・感動的な体験:創造的で大局的で自由な想像ができるようになる
・視座を高める:成功者の視点に立つことで些細な制限を制限と捉えなくなる
・大きく恥をかく:大きな恥によってそれを下回る些細なブレーキが必要なくなる
要因②:現状満足
現状満足とは、満たされた感覚により未来について考えられなくなる状態のことです。
欲求が低下しているため、本当の気持ちを見つけることが困難になります。
★現状満足を促す要因
・妥協:狩りはリスクが大きいから今ある食べ物だけで我慢しよう
・満足感:お腹いっぱいだからもう食べ物のことは考えたくない
・知識不足:他のことは知らないけど、ゲーム以上に楽しいことはないはずだ
・現状認識の不具合:実際はお腹が空いているのに空腹感を感じない
しかし、「現状を満たす条件」と「理想的な未来を満たす条件」が必ずしも一致しているとは限りません。
「延長線上の未来はどうなるのか」「現状を維持する未来で自分は満足できるのか」を想像してみてください。
”現在”ではなく”未来”に焦点を当てることで、本心を見つけるヒントが手に入ります。
★ワクワク感を指標にしよう
現状満足をしているとき、この状態が10年続いた未来を想像してみてください。
その未来に対して、どれほどワクワクするでしょうか。
もし「何がなんでもその未来が欲しい」と感じるならば、全力で現状維持のために労力を割くべきです。
しかし、何も感じなかったり虚しかったりするならば、それは「現状維持をしたい」のではなく「変化を恐れている」可能性が高いです。
その場合は恐れを一旦脇に置き解放感を抱きながら、「本当はどうしたいのか」を考えてみることをおすすめします。
要因③:認知バイアス
認知バイアスとは、非合理的な意思決定を促す心理傾向のことです。
直感的な思考では、認知バイアスの影響を受けやすく本当の気持ちを見失うことがあります。
例.本心を見失わせる認知バイアス
・損失回避:損失を避けることを優先してリスクを取らなくなる
・同調バイアス:周囲の考えや行動に対して無意識的に賛同すること
・インパクト・バイアス:出来事に対する感情の持続時間や大きさの見積りを誤りやすい傾向
・感情ヒューリスティック:好き・嫌いなどの感情反応で結論を導こうとすること
・利用可能性ヒューリスティック:思い出しやすい情報に頼って意思決定しようとすること
認知バイアスの影響を抑えるには、自身が陥りやすい認知バイアスを把握した上で熟考することが有効です。
「認知バイアスの影響を受けていないか?」と定期的に自問することでよりフラットな思考になり、ピュアな自分の気持ちに気づけるようになります。
そのためにも、自分が影響を受けやすい認知バイアスを見つけることをおすすめします。
★感情の大きさは主観的
私たちは出来事に対する「将来の感情規模」を予測することが苦手です。
二極化思考で捉えやすく、ネガティブな感情ほど過大に見積もる傾向があります。
・過大評価:寒いから冷蔵庫にある飲み物を取りに行きたくない
→実際は寒くてつらい思いは10秒程度でありコタツに戻ったらすぐに忘れる
・二極化思考:旅行をしたら楽しいだろう
→実際は楽しいときも辛いときもある
内省で感情を扱うときは、その感情の種類と規模が本当に正しいのかを検討してみてください。
認知バイアスの影響を受けて誤った根拠による判断をしないためにも、自分の傾向を理解しておくことをおすすめします。
要因④:一般的な評価基準
一般的な評価基準とは、親・友人・世間・社会などが善し悪しを決める基準のことです。
幼いころから馴染みのある基準であり、誰もが一般的な評価基準を取り込んでいます。
例.よくある一般的な評価基準
・お金がないよりあるほうがよい
・学歴ががないよりあるほうがよい
・リスクがあるより安定したほうがよい
一般的な評価基準は「普通の感覚」であり、他者理解や共存するために欠かせない共通認識です。
しかし、自分の評価基準も個々に持ち合わせており、本当の気持ちを見つけるにはこちらを重視する必要があります。
例.漫画家を目指すかで悩む
・一般的な評価基準:漫画家ではなく会社員のほうがよいだろう
・自分の評価基準:漫画家を目指す人生のほうが魅力的だ
「何をもって損や得とするのか」「それは重大な損や得なのか」は、その人の持つ自分の評価基準が決めるものです。
本当の気持ちが分からずに選択に迷ったら、自分が重視したい評価基準とは何かを一旦考えてみることをおすすめします。
★損得勘定の注意点
選択肢を検討するとき、それぞれの選択肢にある損得やメリットデメリットに焦点を当てます。
このとき、一般的な評価基準による損得の単純比較をしないように注意してください。
損と得の量を分かりやすい尺度で比較すると、もっとも大切なことを見逃してしまいます。
・単純比較①:売上増加率が高いからA案にしよう
・単純比較②:メリットの数が最も多いからA案にしよう
・自分の判断基準:売上も大切だが誰に貢献するかのほうが大切だ。私はB案を採用したい
要因⑤:衝動と願望の混同
衝動とはその場で生じる欲求であり、深い目的のない直感的な心の動きです。
衝動も自分の気持ちの一部ですが、短期的な欲求を満たすことだけに焦点を当てています。
- 衝動:いたずらしたい、さぼりたい、負けたくない、助けたい
- 願望:もっと仲良くなりたい、もっと強くなりたい
短期的な欲求と長期的な欲求は、かならずしも一致するわけではありません。
むしろ一致していることの方が稀であり、短期的な欲求は長期的な欲求を阻害する傾向があります。
- 短期的な欲求:疲れたくないから仕事せずに遊びたい(衝動)
- 長期的な欲求:家族に安心してもらいたいから仕事したい(願望)
複数の自分の気持ちがあることに気づいたら、その気持ちを生み出す欲求が短期的か長期的かを検討してみてください。
そして、どちらかの欲求を無視するのではなく、どちらの欲求も大切にできるような選択肢を新たに作ることをおすすめします。
★2つの欲求を大切にする
短期的な欲求(衝動)と長期的な欲求(願望)はどちらも大切です。
短期的な欲求により長期的な欲求が阻害される場合は、短期的な欲求の正体を掘り下げてみてください。
「なぜその欲求が生まれているのか」を明確にすることで、すでに満たされていたことに気づいたり、新たな選択肢が生まれたりします。
・短期的な欲求:遊びたい
・長期的な欲求:目標達成したい
・短期的な欲求の原因:自分の時間が失われることへの恐れ
・欲求を満たす条件の明確化:自分の時間とは何か?どうなったら満たされたと言えるのか?
・解決策:その条件を満たせるようなスケジュール作り
個人事業主が本当の気持ちを見つけたいタイミング
ここでは、本当の気持ちを見つけることが前進するためのヒントになる個人事業主のタイミングをお伝えしていきます。
タイミング①:違和感を感じたとき
「なんか違うな」と現在に違和感を感じたときは、本当の気持ちを見つけてみてください。
違和感とは、「想定や期待と異なる方向性に進んでいる」という直感的なサインだからです。
この違和感を取り除かないと、誤った方向に進むことになるとともに、その不安から前進速度も低下します。
例.よくある違和感のサイン
・苦しさ:忙しすぎて辛い、怖くて動けない
・不一致感:なんか違うな、思ったより進めていない
・無意味感:私は何のためにがんばっているんだろう、めんどくさい
違和感を取り除くには、自分が本当に求めている結果や未来を言語化して、その方向性に進むための調整をすることが有効です。
「このまま進んでいけば理想が叶えられる!」という確信度合いが高まるほど、違和感は低下していきます。
★違和感を取り除く手順
①違和感に気づく
②違和感を生み出している本当の気持ちを言語化する
③本当の気持ちに沿った方向性に調整する
ただし、過度な期待や短期的な欲求、誤った現状認識が「期待と現状のギャップ」を生んでいることもあります。
違和感の正体がかならずしも、現実的で妥当なものであるとは限りません。
方向性を調整するときは、「こうなったらいいのに」と「こうなるべきだ」を混同しないようにしましょう。
例.SNSでフォロワー1千人獲得したいけどなんか変
・過度な期待:1週間で達成できると思ったのに…
・短期的な欲求:もっと周りに尊敬されたいのに…
・誤った現状認識:1週間で100フォロワー増は遅いほうだ…
タイミング②:決断ができずに動けないとき
「やるorやらない」という決断ができないとき、それは本心が何かを危惧しているからかもしれません。
その決断をすることで本当に願っていることが阻害されると感じて、抵抗感が生まれているということです。
例.決断できずに動けない
・いつからいつまでに目標を達成するかを決められない
・上手くいっていない方法や環境を変えると決められない
決断ができないときは、決断することで失う損失に注目してみてください。
そして、それが本当に大切で取り返しのつかないものかを検討してみましょう。
私たちは損失を過大に評価する傾向にあり、損失と利益を公平に比べられないためです。
例.ダイエットへの抵抗感
・思考:痩せたいけど、毎日運動するのはめんどくさいし時間がもったいない
・実際の損失:1日15分の時間と運動に費やす体力×90日
・実際の利益:自信をもって友人や異性と会えること
勢い任せに決断することも有効ですが、真に恐れている原因と折り合いをつけることも大切です。
ブレーキをかけている自分と向き合い、なぜ止めようとしているのかを探ってみることをおすすめします。
タイミング③:燃え尽きて働く意欲が失われたとき
燃え尽きて働く意欲が失われたとき、それは価値観の優先順位が変わったからかもしれません。
今までの報酬感では満たされなくなり、別の報酬感を求めるようになったことが原因だということです。
例.価値観の変動
・20代:成功すること、地位を高めることで満たされていた
・40代:教えること、影響を与えることで満たされるようになった
働く意欲が失われたら、「私が求めている報酬感とは何か」を探ってみてください。
自分のがんばりが報われると感じられるものを見つけることで、働く意味を取り戻せるはずです。
特に目先の仕事に追われていると、自分が働く意味や目的を見失う傾向があります。
定期的に自分と向き合う時間をつくり、働くことで得ているものに目を配ることをおすすめします。
★燃え尽きたらきっかけを思い出そう
「なぜ私はこれを始めたのだろうか」と事業をはじめたきっかけを思い出してみてください。
個人事業主は強い情熱をもって事業を始めたケースが多く、その情熱を再発見することで意欲を取り戻せる可能性があるためです。
ただし、過去の目的が達成されたから燃え尽きている可能性もあります。
その場合は、新たな目的を設定することが、燃え尽きの解消につながります。
まとめ
自分の本当の気持ちを見つけるには、次のステップを試してみてください。
- ステップ①:問いをつくる
- ステップ②:答えを出し掘り下げる
- ステップ③:答えを検証して確かめる
「直感=本当の気持ち」でも「熟考=本当の気持ち」でもありません。
本当の気持ちとは、奥底にある根源的な欲求や恐怖です。
「浅い気持ち」ではなく「深い気持ち」を見つけるためにも、さまざまな角度から自分を観察してみましょう。
ただし、行動して見つけた答えを検証しない限り、それが本当の気持ちであるかは確かめられません。
内省と行動を1つのサイクルとして捉え、そのサイクルを何度も回しながら本当の気持ちを探してみることをおすすめします。