自分のご機嫌を取るには、次の2つの方針が挙げられます。
- 方針①:不機嫌になることを予防する
- 方針②:不機嫌をもとの状態に回復する
この記事では、これらの2つの方針についてお伝えしていきます。
不機嫌による個人やチームの生産性の低下を回避するために、ご機嫌でいるための術を身につけてみましょう。
機嫌が悪くなる主な理由
そもそもなぜ機嫌が悪くなるのでしょうか。
ここでは、代表的な3つの理由についてお伝えしていきます。
理由①:不健康
「追い詰められたときにその人の本性が現れる」と言いますが、実際は誰もが追い詰められると感情的で短絡的になるものです。
どんなに優しい人であっても、不健康な状態では余裕が失われて不機嫌になります。
そのため、健康であることが、何よりも重要なご機嫌でいるための条件です。
寝不足やホルモンバランスが崩れているときは、まずはそこから改善していく必要があるでしょう。
例.不健康
・病気
・寝不足
・運動不足
・偏った食事
・過度なストレス状態
・ホルモンバランスの乱れ
理由②:自己防衛
自分を守らなければならないとき、攻撃的になったり、防衛的になったりして、端から見たら不機嫌な状態になります。
機嫌よくオープンマインドでいるためには、自分を守る必要がない安全地帯にいるという認識が必要なのです。
自己防衛の必要性は解釈の問題であり、自身の解釈は主に今までの経験が影響を及ぼしています。
過剰に防衛的である場合は、その経験を振り返り解釈を変える試みが重要になるでしょう。
例.自己防衛
・他者に攻撃されたという解釈
・他者から攻撃されることへの不安
・対人関係で平静を保つための心の鎧
理由③:損失感情
不機嫌を招くほどの強いストレスは、よく損失感によってもたらされます。
期待を大きく下回る結果が生じることで、ストレスホルモンが分泌されて、不機嫌になってしまうのです。
そのため、「自分の勝手な期待」と「成果への解釈」を調整することで損失感情は抑えられます。
不機嫌になったときは、裏切られた期待を掘り下げてみると気づきが得られるでしょう。
例.損失感情
・失った
・失敗した
・無駄になった
・完璧ではなかった
準備中:期待を手放す
自分の機嫌を取るための方針
ここでは、自分の機嫌を取るための2つの方針についてお伝えしていきます。
方針①:予防する
予防とは、機嫌を損ねないための工夫です。
具体的には、次の3つの予防方法が挙げられます。
- 許容量を増やす:ストレスを多く引き受けられるようにする
- ストレス耐性をつける:刺激からストレスを感じづらくする
- ストレス源から距離を取る:周りからストレス源を減らす
予防とは自身が環境に適応することであり、新天地でストレスが溜まりやすいのは予防がまだ徹底されていないためです。
不機嫌の最優先事項はストレスの緩和なので、まずは予防することから始めてみてください。
方針②:回復する
回復とは、不機嫌から立ち直るための工夫です。
具体的には、次の3つの回復方法が挙げられます。
- 注意をそらす:ストレス源以外に注目することで不機嫌状態を中断する
- 折り合いをつける:ストレス源への悩みを一旦完了させる
- スイッチを切り替える:不機嫌モードからご機嫌モードに切り替える
不機嫌をどれほど引きずらないかは、回復パターンの数が大きく影響します。
すべての状況に有効な回復方法は存在しないため、自分の機嫌を取り戻す手段を多く用意しておきましょう。
準備中:ストレス発散
機嫌が悪くなることを予防する方法
ここでは、不機嫌になることを予防するための方法についてお伝えしていきます。
予防①:許容量を増やす
不機嫌にならないためには、自身のストレス容量に空きを作ることが重要になります。
すでにストレスの許容量が一杯だと、些細なストレスでも感情的になる原因になるためです。
- ストレス空容量10%:たいていのストレスは受け流せる
- ストレス空容量99%:些細なことにいら立ち常に不機嫌状態
ストレス空容量を増やすには、「抱え込んでいるストレス」を意識してみてください。
不快な感情を1つひとつ潰していくことで、ストレス容量が解放されていき、余裕を持てるようになります。
例.ストレス空容量を増やす方法
・健康になる:睡眠、食事、運動を適切におこなう
(例.1日8時間睡眠をしてみる)
・元気になる:テンションを高く維持すると抱え込んでいるストレスを手放せる
(例.笑顔で暮らす。第一声を意識する。軽く運動する)
・余裕を持つ:抱え込んでいるストレスを小さくできる
(例.貯金する。家に美味しいものを置いておく)
・ニーズを満たす:満たされないと苛立ちや不安を生じさせる欲求を満たす
(例.仕事以外で感謝されるようにする。保証されないと不安だと上司に伝える)
・小さな不満をつぶす:1分も悩まないような日頃スルーしている不満を解消する
(例.整理整頓する。ストックを購入する。ダイエットする)
・贅沢で希少な体験をする:視野を広げる体験をして自分を癒しストレスを小さくする
(例.月に一度高級旅館に泊まる。未体験のアウトドアに挑戦する)
準備中:ニーズとは
予防②:ストレス耐性をつける
ストレス耐性とは、刺激に対する捉え方のことです。
ストレス耐性が高いほど、過酷な状況でも平静を保ちやすくなります。
- ストレス耐性が低い:他人から低評価されたとき激しく怒る
- ストレス耐性が高い:他人から低評価されても大きく心が揺さぶられない
高いストレス耐性を身につけるには、「刺激と折り合いをつけること」を意識してみてください。
この刺激は致命傷になり得ないと理解していくことで、過剰に反応しなくなり、ストレスが蓄積されづらくなります。
例.ストレス耐性を高める方法
・慣れ:同じ刺激を何度も味わうことで「大丈夫」判定する
・翻訳:棘のある言葉の裏にある相手の優しさを汲み取る
・期待:高すぎる期待を把握して調整する
・保険:1つのコミュニティに依存しない。セーフティーネットをつくる
・パターン化:流れを理解する
・原因と折り合う:刺激がストレスになる理由を明らかにして意味づけを変える
・マインドフルネス:喰らいすぎないためのスキルを身につける
予防③:ストレス源から距離を取る
不機嫌にならないための最も簡単な方法は、機嫌を損ねる原因となる対象から距離を取ることです。
不機嫌になるきっかけと遭遇しなければ、そもそも機嫌を損ねることはありません。
例.職場の人間関係がストレス
・物理的に距離を取る:異動する、転職する
・精神的に距離を取る:どうでもいい人認定する、宇宙人認定する
ストレス源から距離を取るには、「自分のできる範囲でどうにかしてみる」ことを意識してみてください。
コントロール不可能なことを変えようとすると、成果の伴わない努力をすることになり、かえってストレスが生じるようになるためです。
例.ストレス源から距離を取る方法
・相手に伝える:「やめてください」「〇〇して欲しい」と伝える
・環境を変える:ストレスが生じづらい環境に物理的に変える
・仕組みを変える:ストレスが生じる問題が起きない仕組みや流れを再構築する
・自分の行動を変える:ストレスが生じる出来事を誘発しない行動をする
・人間関係を分類する:「大切にしたい人」「協力する人」「どうでもいい人」に分ける
機嫌が悪くなったときの回復方法
ここでは、不機嫌になったときの回復方法についてお伝えしていきます。
回復①:注意をそらす
もっとも手軽に回復する方法は、不機嫌の原因から注意をそらすことです。
思考や感情を整理する余裕が作られ、気持ちを切り替えられるようになります。
ただし、手軽さゆえに効果性はあまり高くありません。
ストレス源から注意をそらしても、継続性のあるものだった場合は再び不機嫌になってしまうでしょう。
あくまで「相手にそれ以上危害を加えないための行動」「冷静になるための行動」でしかないことを押さえておいてください。
例.注意をそらす
・意識を他に移す:動画視聴する、他のことを考える、自分の新たな一面を発見したと考える
・その場から離脱する:散歩する、休憩室に行く
・異なるストレスを感じる:他者と接する、運動する、趣味に没入する
回復②:折り合いをつける
折り合いをつけるとは、「それほど大きな問題ではない」とストレス源に働きかけることです。
ストレスが持続する理由の大部分は未来への不安であり、そのことについて折り合いをつけられれば流せるようになります。
★ストレスの内訳
・過去への怒り:ストレスに感じたきっかけ(なんでこんな不公平なんだ)
・未来への不安:ストレス源における予想(これが今後も続くのか…)
→単発的なストレスなら受け流しやすい(もう二度と会わない人ならある程度許せる)
折り合いをつけるには、自分の思考を読み解き、検証することが重要です。
「感じたこと」「考えたこと」に疑問を持ち、それが絶対に正しいのかを確かめてみてください。
たとえば、いつも自分ばかりが苦労していると夫に対して不機嫌になったら、「いつもなのか」「自分だけが苦労しているのか」と確かめるのです。
ただし、自分ひとりでは怒りを増長させたり、自己否定的になったりしやすいため、他者に協力してもらうことをおすすめします。
例.折り合いをつける
・解釈を変える:ポジティブな意味を見出すことで意欲が生まれる
(例.言葉に棘があるが悪意ではなく善意によるアドバイスだ)
・問題を捉えなおす:自分のコントロール可能範囲で考える
(例.相手が問題行動をすることではなく、それを「やめてほしい」と伝えられないことが問題だ)
・今後の方針を決める:方針が決まることで悩みを一時的に手放せる
(例.問題が起きないようにルールを変更する)
・不機嫌の目的を考える:不機嫌になることで期待していることを検証する
(例.威圧的な態度なら私は他者に攻撃されないだろう)
・広い視野で現状を見直す:ストレス源をフラットな視点で観察する
(例.相手にも私にも欠点と美点がある、大した問題ではないと受け流す)
回復③:スイッチを切り替える
折り合いをつけられても、不機嫌が長続きしてしまうことがあります。
これはストレスホルモンが大量に分泌されているからであり、認知だけではストレス状態の解消が難しいためです。
★不機嫌状態から抜け出す手順
①ストレスを感じる
②ストレスホルモンが分泌されて不機嫌になる
③ストレスと折り合いをつける
④幸せホルモンによって不機嫌状態から抜け出す
ストレス状態を解消するには、幸せホルモンを分泌することが有効です。
ただし、人によって不機嫌状態から抜け出しやすい幸せホルモンは異なります。
試行錯誤して、自分が機嫌のよい状態に回復するパターンを模索してみてください。
例.スイッチを切り替える
・ドーパミン:ご機嫌時の行動を模倣する、モヤモヤをメモに書き破る、許せる自分に誇りを感じる
・セロトニン:深呼吸、リズム運動、感謝を伝える
・オキシトシン:スキンシップ、人を助ける、絶景に感動する
・エンドルフィン:ウォーキング、笑う、音楽を聴く
機嫌が悪くなったときに誤った行動
ここでは、非効果的になりやすい機嫌を直す方法についてお伝えしていきます。
失策①:自分を責める
自分が悪いと認め、責任をすべて引き受けようとする試みがあります。
「私が悪いんだから不機嫌になるのはお門違いだ」と、自分を言いくるめようとする方法です。
責任転嫁はよいことではありませんが、すべて自分の責任として請け負うこともまたよいことではありません。
それは単なる思考停止であり、自分を追い詰めるだけでなく、相手への攻撃にも活用できるためです。
- 自分を追い詰める:自己否定の原因になる
- 相手への攻撃としての活用:自分が傷つくこと、自分が大人であることを見せつける
不機嫌になったとき、その原因や不機嫌状態になった自分を責めないようにしてください。
感情的な判断を下すのではなく、建設的に思考できるような余力を作ることを心掛けてみましょう。
失策②:相手を変えようとする
他者を変えることで、ストレス源を解消しようとする試みがあります。
「威圧的な態度」や「権力の行使」によって、他者を言いくるめようとする方法です。
しかし、相手の行動を変えようとするほど、抵抗感が強まり余計な争いが生まれるものです。
たとえ相手の行動が変わったとしても、それは我慢しているだけであり、怒りや恨みが増大している可能性があります。
もしも相手を変えたいのであれば、「変える」のではなく「フィードバックする」ことを心掛けてみてください。
そして、一方的に変わってもらおうと期待するのではなく、双方で折り合いをつけようとする意志をもつようにしましょう。
- 変える:「AではなくBをして」と指示する、指示に従わないと怒りが増幅する
- フィードバック:「私はAではなくBをしてほしい」と心の内を伝える、その後の行動変化は期待しない
- 一方的な変化の要求:相手を変えようとするが自分は変わる気がない
- 総法的な変化の要求:相手が変わるために許容できる自分の変化を提示する
失策③:すべてから逃げようとする
極端な選択をして、ストレス源から距離を取ろうとする試みがあります。
「縁を切る」「家出する」「黙る」などの、子供っぽい方法です。
ときには逃避を選ぶことも大切ですが、常にその選択をすることは得策ではありません。
乗り越えるべき課題を無視することにつながり、何度も同じような問題で躓き逃避するというパターンが形成されてしまうためです。
嫌なことが起きたとき、ほんの少しだけ大人になろうとしてみてください。
目先のストレスを退けるのではなく、未来を見据えて歩み寄る態度を身につけてみましょう。
- 目先のストレスを避ける:嫌なことを言われたから絶交する
- 未来を見据えて歩み寄る:この人とはもっと仲良くなれる気がするから「嫌だった」と伝えてみる
失策④:破壊行動によるストレス発散
物や他者を攻撃して、ストレスを解消しようとする試みがあります。
「怒鳴る」「悲しむ」「殴る」「壊す」などの、被害者的・動物的な方法です。
これは「プライマルセラピー」と呼ばれる怒りの発散方法であり、かつては推奨されていました。
しかし、自分ひとりでおこなうプライマルセラピーは、以下のようにむしろ逆効果になる恐れがあります。
- 問題が悪化する:関係性が壊れる、物が壊れる、怒鳴る習慣が身につく
- 怒りが増幅する:なぜ不機嫌なのかが分からなくなるがその機嫌の悪さだけが残る、過去の嫌な経験も思い出して繋げてしまう
怒りと向き合うことと、怒りを表に出すことは別の考え方です。
不機嫌になったら、自分が抱えている怒りの正体を見極めることを重視してみてください。
まとめ
自分の機嫌を取るには、次の2つの方針をそれぞれ強化することが重要です。
- 予防する:不機嫌になりづらくするための工夫を施す
(例.許容量を増やす、耐性をつける、距離を取る) - 回復する:不機嫌になっても機嫌を直せる対処法を身につける
(例.注意をそらす、折り合いをつける、スイッチを切り替える)
常に不機嫌になってしまう人は、機嫌が悪いことで得していることを探ってみてください。
不機嫌であらねばならない理由を突き止めることで、すべきことが見えてくるはずです。
- 不機嫌になる条件:親と話すときはいつも不機嫌になる
- 直観的な理由:親はいつもめんどくさい話ばかりをするから
- 深層的な理由:親にどう思われているのかが怖いから、嫌われたくない
自分ひとりでは難しい場合は、カウンセラーやコーチなどの専門家に相談してみましょう。
不機嫌は大きな問題に発展しやすいので、何度も続いているようなら早めに相談することをおすすめします。