副業/起業/フリーランスを始めるとき、「どうやって稼ぐか」を決めた次に悩む問題に「どうやってそのスキルを身につけるか」があります。
教わってスキルを身につけたほうがよいだろうと感じていても、自分なりのやりかたでやってみたい情熱を捨てきれない人は多いのではないでしょうか。
この記事では、自己流が事故る原因と対策についてお伝えしていきます。
自己流にすべきか否かを決めたいときは、個々の情報を取り入れてみてください。
自己流は事故るが”悪”ではない
自己流は事故りやすいですが、ダメな選択というわけではありません。
自己流と指導を受けることの違いは、「誰が持つ仮説なのか」が異なるだけだからです。
- 自己流:自分が思いついた仮説を検証する
- 指導を受ける:他者が思いついた仮説を検証する
まったく行動しなければ成功確率は0%ですが、自己流なら動く以上成功する見込みが生まれます。
反対にいくら優れた指導を受けても、まったく行動しないのであれば成功確率は0%のままです。
もっとも肝心なことは仮説検証を繰り返す態度です。
自己流と指導を受けるかで悩んだら、まずはどちらのほうが動きやすいかを考えてみることをおすすめします。
一般的な成長は守破離が主流
目標達成や成長などの過程は、一般的に「守破離」が主流です。
守破離とは千利休による、物事を極めていく順序の教えになります。
- 守:師の教えに従う
- 破:他の師や流派の教えに従う
- 離:自分独自の型に発展させる
この考え方からすると、自己流は”離”の段階でおこなわれるものです。
まずは基礎を固め、応用できるようになり、それでも足りない場合に”離”が必要になります。
そのため自己流で何かを修めることは、非常識・非効率的で失敗するものとして捉えられやすいです。
出典:https://www.eonet.ne.jp/~sekikoumuten/columnsyuhari.html
自己流の5つのレベル
指導を受けることと自己流にはいくつかの段階があります。
ここでは、「完全指導=レベル0」「完全自己流=レベル4」としてそれぞれの段階をお伝えしていきます。
レベル0:完全指導
完全指導とは、一切の自己流要素がないことです。
時間・課題・解決方法など、与えられたことをこなすことだけが求められます。
ノウハウや継続する環境が整っており、誰でも一定の成果を得やすいことが特徴です。
ただし自己決定感が弱まるため、次第に目的を見失い「やらされている感」が強まってやる気が低下する傾向があります。
★レベル0の例
・軍隊の訓練
・入院による治療
・朝から晩まで付きっきりの合宿
レベル1:ノウハウと課題を指導される
レベル1の段階では、ノウハウと課題だけが指導されます。
実行の自由を与えられており、個人ごとに何に対してどれほど力を注ぐかを決めることが求められます。
- 課題:何が問題で結果がでないのか、何を解決すればいいのか
- ノウハウ:解決するために何をすればいいのか、目標達成に必要な論理
★レベル1の例
・部活
・学校
・習い事
レベル2:ノウハウor課題だけを指導される
レベル2の段階では、ノウハウまたは課題のいずれか一方だけが指導・指摘されます。
次のような人は、レベル2による自己流だといえるでしょう。
- なんとなくのやり方だけ分かったら、あとは自分でやりたい人
- 行き詰ったときにだけ、その原因や進むべき方向性を教わりたい人
★レベル2の例
・情報商材だけ購入する個人事業主
・改善点だけを指摘される新入社員
・模試は受けるが塾には行かない受験生
レベル3:一般的な情報だけを調べる
レベル3の段階では、アクセスが容易な個別化されていない情報だけをもとに自分なりに試行錯誤します。
自分の課題を見つけることも難しいため、停滞しやすい方法です。
ただし、他者が絡まないため動き出しが早く、自分にとって簡単なものであればもっとも早く成果を出せる可能性があります。
★レベル3の例
・他人の模倣
・指導者のいない筋トレ・ダイエット
・教科書やワークブックだけをやりこむ受験生
レベル4:完全自己流
完全自己流では、外からの情報を一切取得しません。
設定した目標に対して、何をどの順番で実行するかをすべて自分で考えます。
現在の自分が持っている情報だけを用いるため、常識とは異なる結果を得られる可能性があります。
しかし、定石がすでに確立されている問題に時間を費やしてしまうこともあり、リスクも非常に大きい方法です。
★レベル4の例
・説明書を見ずに家具を組み立てる
・教科書もなく現地で外国語を習得する
・準備もなくいきなり無人島生活をする
自己流が引き起こす6つの事故
ここでは、自己流が引き起こしやすい事故についてお伝えしていきます。
自己流で取り組むときは、ここにある事故をおこさないように注意してください。
事故①:品質
自己流レベルが高いほど、一般的な水準から離れた品質になりやすいです。
確立された手法や押さえどころを知らない場合は、次のような結果になりやすいためです。
- 一般より著しく低い水準:脆弱性が高い、必要なものが備わっていない
- 一般より著しく高い水準:突飛な発想、異なる方向性、独自の進化
詳しくなればなるほど、新しい発想やアイデアは生まれづらくなります。
そのため、直感的な仮説の検証は、思いもよらないポジティブな成果に結びつくことがあるでしょう。
しかし多くの人が参入している古い領域ほど、分の悪いギャンブル的な実験になる可能性が高いです。
事故②:健康
すべての行動は、何かしらの影響を与えます。
その中でも最も重大なものの1つが、心身への影響です。
- 心への影響:安らぐ、元気になる、不安になる、トラウマになる
- 体への影響:ケガする、回復する、鍛えられる、病気になる
自己流レベルが高いほど、自分の行動による影響を予測・把握することが難しくなります。
知識が欠けていることに加えて、私たちは自分の状態を直接見られないためです。
自分の状態を指摘してくれる人がいないと、悪化していることに気づかずに継続してしまう可能性が高まります。
自分に適した方法を探すことは大切ですが、自分に適しているか否かは客観的に計測する必要があるでしょう。
★ゆでガエル理論
ゆでガエル理論とは、水にカエルをいれた状態で、徐々に熱していくと、カエルは熱くなっていることに気づかずに致命傷を負うことのたとえです。
気づいたときにはすでに深刻化している可能性があるため、自分の状態把握や将来の見通しを立てることが重要になります。
事故③:安全性
安全性を保つためには、決められた手順や用法を守ることが大切です。
しかし知識が乏しい自己流ではその手順や用法を守れず、自分や他者を危険にさらす可能性が高まります。
★安全性の例
・レバレッジを最大にしてFXをおこなう
・塩素系洗剤と酸性洗剤を混ぜて使用する
・視力を回復するためにビタミンAのサプリを多量摂取する
「安全でないこと」は問題ですが、「行為の危険性を自覚しづらいこと」が最も重大な問題です。
危険性が増すだけではなく、安全なことにも不安に感じやすくなり、行動が抑制されることがあります。
- 危険だと判断できない:楽天的
- 安全だと判断できない:過剰な慎重さ
事故④:継続性
自己流でもっとも難しい点は、仮説を検証し続ける継続性です。
正解がわからないなかで歩み続けなければならず、進歩をよりいっそう感じづらいからです。
- 指導あり:指示された行動や課題に取り組む、細やかな進捗を教えてもらえる
- 指導なし:自分で行動や課題を決める、前進or後退を自分で判断しなければならない
目に見える結果が明るみになるまでには、たいてい多くの地道な行動の積み重ねが求められます。
自己流では意志力だけで、結果が出るまでに生じる不安や葛藤を抑えるしかありません。
- 指導あり:指導者が前進することを保証してくれるため不安が和らぐ
- 自己流:「本当にこの方法でいいのか?」と常に不安と向き合う必要がある
短期的な問題解決なら、継続性は大した問題にならないでしょう。
しかし、長期的な問題解決では方法の正誤に関わらず、進捗の不明確さによる不安が挫折を引き起こします。
人によってはその不安感を無視するために、思考することをやめて「いつか成果を得られるだろう」と試行錯誤ではなく同じ行動の継続だけに注力するようになります。
事故⑤:効率性
自己流と指導ありのもっとも注目される違いは、効率性だといえます。
成果の大きさではなく、同じ成果を得るまでのコストに違いが生じます。
- 成果の大きさ(品質):テストで何点取れるか
- 成果を得るまでのコスト:何時間の勉強で80点取れるか
自己流ではゼロから成功までの道筋を試行錯誤する必要があり、効率が悪い傾向にあります。
対して指導ありではゴールまでの道筋を指示されるため、少ないコストで成果を得やすいです。
- 指導あり:この順番で参考書を解けばいい。分からない部分は1つずつ教える
- 自己流:どの参考書を買えばいいだろう?何をどうやって解けばいいだろう?
事故⑥:違法性
自己流における最大の懸念点は、法的リスクです。
著作権侵害や特定商取引法違反など、特にビジネスでは自己流だと知らぬ間に法を犯してしまうことがよく起きます。
違法行為は罰則があるだけではなく、個人としての信用も低下させるため、自己流であっても法律に関しては慎重になる必要があるでしょう。
- 指導あり:指導者に気を付けるべき法律を教えてもらえる
- 自己流:違法を指摘されてから気づく
事故りづらい自己流の7つの手順
ここでは、自己流で事故らないための手順をお伝えしていきます。
自己流で取り組みたい場合は、この手順を取り入れてみてください。
手順①:目標と目的を明確にする
まずは、目標と目的を明確にしていきます。
この2つが抽象的だと解決策が出づらく、また意味もなく完全自己流を選びやすくなるためです。
- 目標:何をいつまでに達成したいのか、成功基準は何か
- 目的:なぜ達成したいのか、達成してどうなりたいのか
目標や目的がブレると、行動方針にも一貫性がなくなります。
目標と目的を明確にしたら紙に書きだして、思い出すために毎日チェックすることをおすすめします。
手順②:直感的な解決方法を洗い出す
自己流における最大のメリットは、常識から外れた解決方法を思いつきやすいことです。
「普通」を知れば知るほど新しいアイデアは思いつけなくなるため、目標を決めたら直感的に思いつく解決策や問題点をすべて書き留めてみてください。
ここでは、アイデアの善し悪しではなく、アイデアの量が重要になります。
ブレーンストーミング方式で、評価せずにアイデア出しをしてみましょう。
手順③:一般的な解決方法を調べつくす
自分独自のアイデアを出し尽くしたら、一般的な、もしくは他者が実施した解決策を集めます。
仮説となる手札を外から集めることで、次の2つの無駄を省くことが理由です。
- 一般よりも劣ったアイデアを実行すること
- すでに検証済みのアイデアを検証すること
ただし、情報収集は期限を決めておこなうことをおすすめします。
調べるほど細かい違いのある解決策が見つかり、期限がないと情報収集を終えられないからです。
手順④:取り組む解決方法を選ぶ
「直感的な解決方法」と「一般的な解決方法」を洗い出したら、取り組む解決方法を1つ選びます。
ただし、選ぶときは認知バイアスの影響を受けやすいため、あらかじめ選ぶための評価基準を明確にしましょう。
<確認しておきたい基準>
・目的と目標に適切か:効率性、品質
・自分も他社も安全か:安全性、法律
・私はそれに取り組めるか:強み、継続
・私のリソースで間に合うか:お金、時間、人脈
<認知バイアスによる影響>
・他責にできるものほど選びやすくなる
・お金がかからないものほど選びやすくなる
・手間がかからないものほど選びやすくなる
・自分のアイデアであるほど選びやすくなる
・人と関わる必要がないものほど選びやすくなる
・直感的な「やりやすさ」「好き」で選ぼうとする
手順⑤:計画を立てる
解決方法を選んだら、それによる計画を立てていきます。
何をどういう順序で進めていくのかを、ストーリーとして描いてみてください。
ただし、完璧な計画は作れないため、計画を更新して修正する前提のもとつくることをおすすめします。
★計画を立てるステップ
ステップ1.目標達成の方程式をつくる
ステップ2.マイルストーンを配置する
ステップ3.行動目標を設定する(期日、仮説、評価基準を設定)
ステップ4.失敗パターンを想定し対策する
ステップ5.振り返り日を設定する(仮説の効果検証と修正)
手順⑥:環境を整える
計画を立てたら、着実にゴールに近づくための環境を整えます。
ここで特に力を入れて用意したい環境は、以下の3つです。
- 継続するための環境
- 相談するための環境
- 現状把握するための環境(フィードバッカーを見つける)
手順⑦:計画を実行する
環境がある程度整ったら、実行しながら計画や環境を更新していきます。
計画の実行段階では、目的のすり替わりや行動の停止に注意してください。
- 目的のすり替わり:意図せずに当初の目的が他の目的に置き換わること
- 行動の停止:不安や恐怖、めんどくささから行動が止まること
個人事業主によくある自己流での事故
ここでは、個人事業主が陥りがちな自己流による失敗についてお伝えしていきます。
ケース①:手段への執着
もっとも多い失敗の1つは、”やりやすさ”だけを基準に自己流を選ぶことです。
意地や心理的抵抗感から、「効率や効果」ではなく「手段」にこだわり目標達成が困難になります。
★手段にこだわる例
・リサーチせずに商品を作る
・モニターをせずにいきなり商品を売ろうとする
・結果が出ていないのに計画を修正しないまま継続する
・人と話さずにパソコンの前で1人で方法で稼ごうとする
・お金の節約を優先して莫大な時間を要して目標達成を目指す
・3年間成果が出ていないのに何も変えずにブログを書き続ける
手段に執着しないためには、複数の仮説を用意することが有効になります。
そして目的や目標に対して、どの仮説が適切かを検討してみてください。
ただし自分1人だけでは客観的に考えづらいため、コーチのような第三者を交えて議論してみることをおすすめします。
★閾値を見定めよう
「どれほどの時間を費やせば成果が出やすいのか」という閾値は施策ごとに異なります。
施策を試すときは、前もってどれほどリソースを割く必要があるのかを検討するようにしましょう。
・閾値より少ない:ブログを1カ月続けたけれどPVが伸びないから諦めよう
・閾値より多すぎる:ブログを10年間続けてもPVが伸びてないけど続けよう
ケース②:不安感による行動の停止
自己流は、とにかく不安に飲み込まれやすいです。
先を見通すことが難しく、進歩も確認しづらく、本当に自分は正しいのかを認識しづらいためです。
★不安感による行動停止の例
・自分の才能への不信感:やってみたけどまったく上達しない…
・自分の方法への不信感:これをこのまま続けてもうまくいく気がしない…
・他の方法への信用:もっと他によい方法がありそうだからこの方法は諦めよう…
「そのまま継続していいんだ」という安心感は、自分1人では論理的にも感情的にもそう簡単には得られません。
たとえ効果がある方法だったとしても、自己流では進歩に気づかずに行動を止めてしまいます。
この不安感から行動が止まるくらいなら、誰かに教わりながら目標達成を目指したほうが成長も結果も早く手に入るかもしれません。
どうしても自己流が必要な場合は、不安や恐怖と向き合う術を身につける必要があるでしょう。
ケース③:修復が難しい致命傷を負う
個人ビジネスにおける自己流では、知ってさえいれば避けられたトラブルに遭遇しやすいです。
「業界やお客様の常識」よりも「自分の我」を通しやすく、それによる衝突が生じやすいためです。
★ビジネスにおける致命傷の例
・法に抵触する行為
・業界におけるタブーへの抵触
・倫理的にNGな発言やサービスの提供
・「セールスの中身」と「商品の質」の悪質的な不一致
知ってさえいれば、トラブルを回避するための妥協や折衷案を模索できます。
しかし、自己流でそれらをいちいち調べてすり合わせることは難しく、致命傷になるまで放置されてしまうのです。
★致命傷を引き起こす行動に気づきづらい理由
・自分1人では客観的な意思決定が難しいから
・関係性が薄い知り合いはめんどくさがって指摘しないから
・個人ビジネスに関する常識は普通に生きていては身につかないことばかりだから
かといって、慎重になりすぎるとリスクの低い行動も停滞する可能性があります。
少なくとも致命傷の線引きができるまでは、その業界で自分のスキルや感覚を育てたほうがよいかもしれません。
まとめ
自己流はたしかに事故りやすいですが、自己流にもメリットはあり事故への対策も可能です。
そのため真の問題は、「なぜ自己流である必要があるのか」「自己流でなければならない理由は何なのか」だといえます。
自己流か教わるかを正しく選択するためにも、目標と目的を明確にして、判断基準を明確にすることをおすすめします。