「仕事が楽しい!」と最後に感じたのはいつでしょうか。
目の前の作業に手を付けられないのは、昔あったやる気が失われて、燃え尽き症候群に陥っているからかもしれません。
この記事では、燃え尽き症候群への対処と対策についてお伝えしていきます。
再び仕事への意欲を取り戻すためにも、ここで紹介する方法を取り入れてみてください。
燃え尽き症候群の基本情報
燃え尽き症候群とは、1970年代にハーバート・フロイデンバーガーが提唱した概念です。
バーンアウトとも呼ばれており、仕事から生じる持続的なストレスにより以下の症状が生じます。
- 意欲喪失
- 情緒荒廃
- 対人関係の親密さ減弱
- 疾病に対する抵抗力の低下
- 職務上能率低下と職務怠慢
- 人生に対する慢性的不満と悲観
燃え尽き症候群は、すべての職種で生じるリスクがあります。
以下の3つの特徴が現れている場合は、燃え尽き症候群である可能性が高いです。
- 情緒的消耗感:仕事への情熱や意欲が消耗しきった状態
- 脱人格化:お客様に対して無情な振る舞いをする
- 個人的達成感の低下:仕事を終えても達成感を得られない
出典
・https://www.tokyo-yokohama-tms-cl.jp/burn-out/
・https://mba.globis.ac.jp/careernote/1494.html
燃え尽きにつながる3つの要因
ここでは、燃え尽き症候群を生じさせる主な要因についてお伝えしていきます。
要因①:満足感
意欲的に行動できるのは、期待とギャップを埋めるためです。
「〇〇を得ている未来」と「〇〇を得ていない現在」とのギャップを感じ取り、それを埋めるために行動意欲が湧いてきます。
しかし、満たされた感覚が生じると、そのギャップを認識できなくなり行動する意味を見失います。
欲しいものを得るための手段が「仕事」だった場合、「欲しいものが得られた」または「もう欲しくなくなった」瞬間に働く必要性がなくなってしまうのです。
- 空腹のとき→命を落とすリスクがあっても狩猟をする
- 満腹のとき→リスクを嫌って狩猟しない、ご飯が目の前にあっても食べたいと思わない
一度にたくさん取り組んだり、情報量の少ない中で報酬を得た瞬間をシミュレーションしすぎたりすると、満足感に満たされて飽きが生じます。
満足するとしばらくは満たされ続けてしまうため、意欲を長持ちさせるためにはいかに自分を満たしきらずに「もっとやりたい」という気持ちを翌日に持ち越せるかが重要になります。
例.満足感による燃え尽き
・十分にがんばったからもういいや
・受験に合格したからもう勉強したくない
・今のままでも楽しいから私は変化を望まない
要因②:報酬感
欲しいものを得るためだろうと、何かしらの行動を続けるには定期的に報酬を感じ取ることが必要になります。
報酬感が得られない行動はただ苦しいだけであり、心が消耗しきり活力が失われてしまうためです。
- 報酬なし→大学受験に合格するまでの日々に楽しさが1つもない
- 報酬あり→大学受験に合格するまでの日々では点数が上がること、美味しいご飯、塾での友達との会話を楽しみにしていた
「がんばった甲斐があった」「これを続ける意味はあるんだ」と実感することで、エネルギーがチャージされて再び意欲的に行動できるようになります。
報酬と感じる要因は人によって異なるため、自分ががんばりつづけるためのご褒美を能動的に受け取るための工夫が大切です。
例.報酬感による燃え尽き
・お金のためだけの労働
・成長できずに停滞している感覚
・がんばって働いても全く家族に感謝されない関係性
要因③:ストレス
叶えたい望みがあっても、行動によって大きな報酬感が得られても、強いストレスは心を摩耗させます。
苦しさから逃れるために心を押し殺すようになり、欲求を満たしたいという意欲が失われて、機械のようにただ淡々と取り組むことに徹するようになるでしょう。
そうして強いストレスは、自己決定感を低下させて、やらされている感を強めます。
「やりたくない」と感じたときは、「欲しくなくなったから」なのか「ストレスが生じるから」なのかを判別してみてください。
例.ストレスによる燃え尽き
・上司に怒られないことが目的になる
・理想までの距離が遠すぎることに絶望する
・自分よりも才能ある人と比較して何をしても無駄だと悟る
燃え尽きたときの対処法5選
ここでは、燃え尽き症候群に陥ったときの対処法についてお伝えしていきます。
ただし、日常生活に支障をきたす状態が1カ月以上続くときは、専門機関に相談するようにしてください。
対処法①:内省する
燃え尽き症候群に陥った原因を特定するために、自分について深く考えてみましょう。
なぜ燃え尽きているのかという原因が分かれば、より効果的な方法を試せるようになります。
★内省したいこと
・価値観:充実感を満たす要因は何か、変わったのか、満たされなくなったのか
・ストレス:欲求よりも強い回避したいものがあるのか
・過去の期待:何のために仕事を始めたのか、その目的は変わったのか
・延長線上の未来:このままだと不幸になると考えているのか、何が物足りないのか
たとえば「昔あった情熱が燃え尽きていた」というケースでは、価値観の変化が原因として考えられます。
経験を積むことで、若いころとは異なる価値観を大切だと感じるようになり、今までのやり方では価値観を満たせなくなってしまうのです。
- 若いころ:冒険することこそが大切だ!
- 歳を重ねてから:責任を持つことこそが大切だ!
- 今までの働き方:冒険ばかりで私の価値観は満たされない…
- 働き方のアップデート:責任ある仕事を増やそう
よりよい内省をするには、核心となる自分の本心を見つけることが大切です。
想像力を制限する思考を取り払い、心の内に秘めている本当の理想を言語化してみてください。
対処法②:期待を手放す
期待はモチベーションを高める役割を担いますが、期待と結果のギャップが大きいほどストレスも強まります。
そして強すぎるストレスは極端な選択に走らせやすく、行動を継続することが困難になります。
この強いストレスを解消したり、妥当な選択肢を選んだりするためには、「期待の手放し」「期待の調整」が有効です。
例.過剰な期待によるストレス反応
・過剰な期待→この仕事をすれば上司にすごく褒められるだろう
・実際の結果→何もなかった。ねぎらいの言葉ひとつなかった
・ストレス→つらい。なんのために頑張ったんだろうか
・反応①→この上司は性格が悪い。こんな職場辞めてやる(極端な選択)
・反応②→もっと質の高い仕事をすれば今度こそ褒められるはず(期待の調整)
・反応③→上司は褒める行為が苦手な人だ。もう褒められると期待しない(期待の手放し)
ただし、ニーズと呼ばれる欲求には注意が必要です。
ニーズとは可能なら満たしたい欲求ではなく、満たされないと不安や苛立ちを生じさせる類の欲求です。
このニーズを満たそうとする期待を手放すことは難しく、つい極端な選択に走らせてしまいます。
- 一般的な欲求:お金持ちになれたら嬉しいなぁ
→お金持ちになれなかったけどまぁいいか。この暮らしが私には妥当だよな - ニーズ:大切にされていないと感じると攻撃的になってしまう
→大切にされない。相手が悪いんだ。怒鳴って相手を変えなきゃ!
仕事でニーズを満たせることもありますが、継続することは難しく目的のすり替えの原因になります。
「ニーズを満たせる」と期待して仕事をすると、満たされなかったときに大きく裏切られた気分になり、仕事や仕事仲間、お客様に嫌気をさしてしまうでしょう。
- ニーズを満たすことが目的:感謝されるために接客をしよう
- ニーズが満たされなかった場合:どうせ働いても感謝されない、もう仕事なんてやめてやろう
仕事に対するこの類の期待を手放すには、他でニーズを満たす活動をすることが有効です。
仕事でイライラしたとき、その原因が期待したものが手に入らなかったのであれば、他の活動でそのニーズを満たせないかを試してみてください。
自分の欲求を、1つの仕事だけですべて満たす必要はありません。
仕事以外でニーズを満たせると納得できれば、本当の目標に向かって仕事に専念できるようになります。
準備中:自分のご機嫌を取る方法
対処法③:休む/距離をとる
もっとも簡単に取り組める対処法は、休んで仕事から距離を置くことです。
肉体的・精神的な疲労を取り除くことで、仕事への意欲を取り戻せる可能性があります。
また、日常から離れることで、見失っていた大切なことを見つけるきっかけになるでしょう。
- 疲労時の症状:疲労が溜まると意欲が低下して働く意味を忘れてしまう
- 症状の理由:隣の芝が青く見えやすくなるから。今ある幸福を認識しづらくなるから
ただし、休息をとっても同じ働き方が続くと、再び疲労が蓄積され視野が狭まり燃え尽きてしまいます。
休みとるだけではなく、極度に燃え尽きないための工夫も併せておこなうことをおすすめします。
例.休みと一緒におこないたい工夫
・新しい仮説をづくり
・働きすぎないためのスケジュール管理
・仕事における大切なことを大切だと再確認するための機会づくり
対処法④:刺激的な体験をする
刺激的な体験をすることで、視野が広がりワクワク感を取り戻せます。
新しいアイデアが思いつきやすくなり、仕事へのマンネリ感を解消するきっかけになるでしょう。
よい刺激的な体験とは、創造力が膨らむ類の活動です。
他者との交流や未知の体験など、多少のストレスが生じる慣れていない経験をすることで新しい気づきが生まれます。
例.刺激的な体験
・通常の3倍の予算で旅行をする
・自分とは異なる業界の人と交流する
・ずっと訪れたかった飲食店で食事する
・いつもとは異なるジャンルの書籍を読む
・話したことがほとんどない上役と食事する
ワクワク感は他の活動にも伝染します。
仕事でワクワクできない場合は、一旦他の活動で刺激的な体験をしてみてください。
刺激的な体験により元気な状態になるだけで、仕事への見方が変わり充実感を抱くようになるかもしれません。
対処法⑤:新たな目標を設定する
今の目的地へのときめきが失われたことが原因で、燃え尽き症候群に陥ることがあります。
「がんばってもお金が増えるだけか…」というように、がんばる意味を見失ったパターンです。
このようなときは、延長線上の未来から抜け出すような目標を設定してみてください。
数を増やすだけではなく、意義を変えるような挑戦にすることで、再び仕事への熱意が戻ります。
- 数を増やすだけの挑戦:月収50万円の次は月収80万円を目指そう
- 意義を変えるような挑戦:自分で稼げるようになったから他の人も稼げるような支援をしよう
何を目指すことにワクワクするかは、自分にしか分かりません。
自分の過去を思い返したり、未来を想像したり、他者を観察したりして、どんな人生にしてみたいかを探ってみましょう。
ただし、「これだ!」という自分を強く惹きつける目標が見つかりづらいのも事実です。
ワクワク度を10点満点で評価して、延長線上の未来よりも点数が高いのならば一旦そこを目的地にしてみることをおすすめします。
燃え尽き症候群への対策5選
ここでは、燃え尽きづらくなるための対策についてお伝えしていきます。
対策①:人生全体に配慮する
多くの人にとっての幸福とは、一点突破した成功ではなくバランスよい状態です。
受験のように短い期間だけ何かに専念することならできますが、一生その状態が続くとなると他の大切な欲求が満たされないと悟り、今の状態を維持することへの抵抗感が生じます。
例.「仕事にさえ成功すれば家族は幸せになれる」という信念
・初期:とことん仕事をがんばろうとやる気に満ち溢れる
・中期:成果を得られるようになり楽しくなっていく
・後期:離婚を突き付けられて仕事への意欲が失われる
バランスよい状態になることが難しい理由は、自分にとって大切なこととその状況が分かりづらいことにあります。
自分の本心はゆっくりと内省しなければ見つからず、また失ってから初めて気づくこともあるためです。
- 気づきやすい欲求:結婚したい、出世したい、贅沢したい
- 失わないと気づきづらい欲求:家族/親/友人との関係性、時間、健康
定期的に立ち止まって人生全体を俯瞰して、実現したい理想の姿を描いてみてください。
その理想から必要な要素を抽出することで、自分のリソースをバランスよく分配できるようになります。
「〇〇が上手くいっているから人生は順調だ」と考えているのなら、燃え尽き症候群に陥るカウントダウンが始まっているかもしれません。
- 得るためのリソース分配:収入を増やす、恋人を作る、家族との関係性を改善する
- 維持するためのリソース分配:病気にならないように食事に気を付ける、家族関係が悪化しないように毎日1時間は家族との時間に専念する
対策②:再選択する機会を作る
燃え尽きないためには、「私が選んだ」という自己決定感が大切になります。
もし「私の意志に関係なくそれしか選べない」と感じると、たとえ意義ある行動であったとしても「私の未来は退屈だ」と考えるようになるためです。
やらされていると感じるだけで、やるべきことへの意欲は低下して、他の選択肢が魅力的に見えてしまいます。
他の人の人生をうらやましく思い、自分の人生が全くの無価値のように感じてしまうでしょう。
例.勉強を強制させられている子供
・選択:私は勉強するしかない、でないとひどい目に遭う
・自分の人生:一生親の言うことを聞かなきゃならないんだ。まるで操り人形のようだ
・他人の人生:ゲームばかりできる人生が羨ましい。自由が欲しい
ただし、自分で決めたことであっても、いつのまにか他人にやらされているような感覚になり、自己決定感が弱まることがあります。
これは「過去の自分」と「現在の自分」を区別して考えていたり、過去の想定と変わっていたりするためです。
- 過去と現在の区別:昔決めてしまったから私は続けなければならないんだ
- 過去の想定からの剥離:もっと稼げると思って始めたのにそうではなかった
燃え尽きない程度に自己決定感を維持するためには、再選択する機会を定期的に設けることが有効です。
複数の道における未来の可能性を想像して、どの道に進みたいのかを自問自答してみてください。
「取り組むべき行動」ではなく「得られる可能性のある未来」を想像することが重要です。
自分が進みたい目的地を選ぼうとすることで、たとえ困難な道のりであっても選択することへの意欲が生まれます。
- 取り組むべき行動(過程):勉強をたくさんする未来か、監督にたくさん怒られる未来か…
- 得られる可能性のある未来(地点):華やかな大学生活を送るか、プロとして活躍するか…
★目標の点検
目標設定をしたら、定期的にその目標を達成すべきかを点検しましょう。
目標達成の過程を進んでいくなかで、達成する必要性が失われていたり、成長したことにより難易度が低下していたりするためです。
また、「目標の達成が見えてきた瞬間」から「目標達成ができた瞬間」までがもっとも燃え尽きやすいタイミングです。
目標達成の過程の終盤にまでたどり着いたら、次の目的地を見つけてワクワク感を補充することをおすすめします。
対策③:ストレス源と向き合う
強いストレスの前では、情熱のような意志力は無力に等しいです。
逃げたくて仕方がないようなストレスは、夢や希望への情熱をどんどん消耗させていきます。
「こんな辛い日々に耐えられるほどの目標ではない」と考えるようになり、意欲が低下して燃え尽きてしまうでしょう。
- よいストレス:ほどよく緊張できて集中力が上がるようなストレス
- 悪いストレス:とにかく逃げだしたくなるようなストレス
時間が解決することもありますが、時間をかけるほどストレスが大きくなったり、解決前に意志力が尽きたりすることもあります。
強いストレスを感じたら、情熱がゼロになる前にストレスを取り除く、または弱化するように働きかけましょう。
まずは、何からストレスが生じており、それをストレスと感じるのはなぜなのかを明確にしてみてください。
ストレスの原因を解明することで、本当に向き合うべき問題が明らかになります。
例.出社するたびに上司に怒られている
・ストレス源を放置する:お酒で現実逃避する、毎週末を楽しみにして我慢する
・ストレス源から離れる:転職する、上司に直訴する、人事部に相談する
・ストレス源への解釈を変える:ネタリストを作る、あと1カ月の我慢だと希望を持つ
対策④:目的地までの階段を作る
意欲を失わせるよくある理由は、理想までの距離が遠すぎることです。
「〇〇を実現したい!」とその道に進んでも、取り組んでみると思った以上に大変で自分には才能がないと認識します。
理想が簡単に手に入ると思っていた予想とのギャップや、自分の能力の低さによる絶望感から、「もういいかな」と自分の限界を理解したように錯覚して燃え尽きてしまうのです。
- 期待:私ならちょっとがんばれば絵がうまくなる
- 現実:100時間もがんばったのに満足いく絵が描けない、私なんてこんなものか
挑戦と撤退を繰り返して、自分の強みを活かせる分野を探すことは大切です。
しかし、撤退を決断するまでの閾値が狭いと、自分の才能が生かせる分野だと気づく前に辞めてしまうでしょう。
- 撤退までの閾値が広い:1万時間挑戦してから続けるかを考えよう
- 撤退までの閾値が狭い:1回だけ挑戦してから続けるかを考えよう
自分の限界を錯覚させる壁によって燃え尽きないためには、現状と目的地の距離を理解して、そこまでの階段を作ることが有効です。
今の自分がどれほどの時間をかけて、どのようなプロセスを経ることで目的地にたどり着けるのかを把握できれば、予想とのギャップが小さくなり絶望感が和らぎます。
実現したいことや達成したいことを見つけたら、他者の努力量やプロセスを調べたり、指導やフィードバックを成功者に提供してもらったりしてみてください。
ただし、他者や理想自己との比較による焦りは燃え尽きることを促すため、自分のペースによる計画を見積り、過去の自分とだけ比較することをおすすめします。
- 現状と目的地の距離:英語を習得するには適切な環境で2000時間の勉強が必要だ
- 現状から目的地までの階段:今は構文理解と単語記憶を重点的におこなう段階だ
対策⑤:報酬感を得られる仕組みを作る
燃え尽きないためには、定期的に報酬感を受け取りエネルギー補充をする必要があります。
しかし、同じ環境・作業・成果を出したとしても、どれほどの報酬感を受け取れるかは人によって異なります。
報酬感の多くは受け取っていることに気づくことが難しく、また報酬をどれほど味わえるかもその人の力量に左右されるためです。
- 報酬感に気づく能力:相手の笑顔を察知する、自分の成長具合を把握するなど
- 報酬感を味わう能力:嬉しい気持ちを流さずに100%喜ぶ
お金や地位などの報酬は分かりやすいですが、すぐに慣れてしまい報酬として感じづらくなります。
自分が他に報酬と感じるものを把握して、それを積極的に受け取れる仕組みを作ってみてください。
「がんばった甲斐があった」と思える瞬間が増えるほど、無理せずに行動を継続できるようになるでしょう。
例.報酬と仕組み
・楽しさ:楽しいを言語化する、イベントや関係性を作る
・成長感:過去の自分と比較する、後輩指導をする機会を作る
・前進感:マイルストーンを作る、フィードバッカーを見つける
・充実感:ボーっとする時間を作る、理想と目標と行動を一致させる、家族と思い出を作る
燃え尽き症候群を引き起こす思考6選
ここでは、燃え尽き症候群を引き起こしやすい考え方についてお伝えしていきます。
思考①:歯車思考
「私の代わりはいくらでもいる」という思考は、自己重要感を下げて行動理由を見失わせます。
何のために働いているのかが分からなくなり、「自分なんていてもいなくても一緒」と感じるようになるためです。
- 高い自己重要感:私はここに欠かせない存在だ
- 低い自己重要感:私はいてもいなくても何も変わらない、むしろ悪影響を及ぼしているかも
歯車思考に陥らないためには、他人にとっての自分の存在意義を手放すことが大切です。
社会や会社、他者にとってはすべての人が歯車の1つであり、そこに自分の存在意義を求めてもただ厄介な人でしかありません。
重要なのは。「他者からどんな評価を下されるか」ではなく「自分がどんな人生にしたいか」です。
歯車ではない存在なんてこの世にはいないと考え、そのうえでどう生きたいのかを検討してみてください。
思考②:無力思考
「どうせ私には無理」という思考は、「このまま続けても欲しいものが手に入らない」という絶望です。
「私に必要のない行動」として分類され、無力な自分に相応しくない情熱を手放すことを促します。
- 効力感:がんばればプロ野球選手になれるかもしれない、だから練習しよう
- 無力感:どうせ私はプロ野球選手にはなれない、この練習に何の意味があるのだろうか
無力思考に陥らないためには、自分の可能性をどれほど信じ続けられるかが肝になります。
「現状の無力さ」ではなく「将来の可能性」に焦点を当ててみてください。
「もし成功する未来があるとしたら何が違うのだろうか?」と自問自答することで、新しい仮説が生まれて将来の可能性を信じられるようになります。
思考③:嫉妬思考
「あの人は簡単に成功してずるい」という思考は、他者比較により自分への不信感を生じさせます。
自分の才能のなさを錯覚して、これからおこなう努力を無意味に感じ、自分が活躍しやすい他の領域を探すことを促すでしょう。
- 上方比較:私より簡単に成功する人がいる、つまり私は才能がない、つまりがんばる意味がない
- 下方比較:私より苦労している人がいる、つまり私には才能がある、つまりがんばる意味がある
比較のしやすさは性質であり、比較をしないようにするというのは難しい解決策です。
比較をしないことは諦めて、どのように比較をするのかという練度を高めることをおすすめします。
- 比較対象を変える:「他者」ではなく「過去や理想の自分」と比較する、「結果」ではなく「密度(努力量や成長率)」で比較する
- 嫉妬への解釈を変える:「私には才能がない」ではなく「私はうらやましいと思っている」と考える
思考④:無意味思考
「がんばったから何?」「成功になんか意味があるの?」という思考は、目標達成することへの意欲を冷まします。
しかし、多くの場合は偽りの達観であり、高すぎる期待・低すぎる見積り・現状維持バイアスなどが原因です。
- 高すぎる期待:私はもっと重要な行動をするべきだ
- 低すぎる見積り:その行動で得られる成果物は価値の低いものだろう
- 現状維持バイアス:今が最高で変化することはリスクが大きいだけ
- リソースの過大評価:お金や時間は大切で有効活用しなければならない
例.無意味思考を促す思考
・正当化:勉強したくない。いい大学に入ったからって何が変わるの
・二極化:結婚しても幸せになれるわけでもないし婚活するだけ無駄かな
・虚無感:ゲーム実況者になりたい。でもその時間を他に使ったほうがいいよな…
・パターン化:規模が異なるだけで同じことの繰り返し。これに何の意味があるの
無意味思考により燃え尽きそうになったら、行動を止めようとする葛藤の正体を明らかにしてみてください。
「欲しい、でもな…」を言語化することで、行動を躊躇する理由を検証できるようになります。
また、「予測」ではなく「体験」から判断することを良しとしてみるとよいでしょう。
- 欲求:小説家になりたい
- ブレーキ:その時間があったら資格取得して転職したほうが稼ぎやすいだろう
- 検証ポイント:私はお金が欲しいのか?必要なお金は他で補えないのか?
- 予測:小説家になっても楽しくないかもしれない
- 体験:小説を書いてから楽しいかどうかを判断しよう
思考⑤:割り切り思考
「〇〇のためだけに働いている」という思考は、割り切ったもの以外から報酬感を得ることを阻害します。
たしかに、「絶対に得たいもの」を絞ることで目的意識が強まりストレス耐性も高まるでしょう。
しかし、視野が狭まることで「楽しさ」を感じることが難しくなり、次第に行動することへのモチベーションが低下します。
ただのつまらない作業を淡々とこなす日々に、「何やっているんだろう私は」と苦しみが強まっていくのです。
例.割り切り思考
・お金のためだけに働いている
・子育てのためだけに離婚せずにいる
・プロ野球選手になるためだけにクラブに所属している
割り切り思考により燃え尽きないためには、自分の意志力を信じないことが肝心です。
割り切って行動し続けられる意志力を持つ人は少なく、たいていはエネルギーが切れて挫折してしまいます。
目的を達するためにも、現状から報酬感を受け取ることを意識してみてください。
「目的を絞ること」と「目的以外は無駄だと捉えること」は別の考え方なので、混同しないように注意することをおすすめします。
- 目的を絞る:私は家族を養うために働いている(それが一番大切)
- 目的以外を無駄だと捉える:給料に関係しない人間関係や娯楽はすべて無駄だ
準備中:仕事を割り切ることは悪いのか
思考⑥:裏切られ思考
「思っていたのと違った」という裏切られ思考は、求めていた成果物が得られないと悟ることで生じます。
期待と現実のギャップにより意気消沈して、ここでがんばる意味を見失い燃え尽きたような感覚になるのです。
期待があるから行動意欲が生まれますが、高すぎる期待には注意しなければなりません。
例.裏切られ思考
・自分への期待:私なら簡単に成果を出せると思っていたのに…
・仕事への期待:この仕事はもっとキラキラしていると思っていたのに…
・職場への期待:上司がしっかりと指導してくれると思っていたのに…
・お客様への期待:熱意のある人へのサポートができると思っていたのに…
裏切られ思考で燃え尽きないためには、期待を修正する能力が重要になります。
「A案が潰れたからB案にしよう」というように、「裏切られたこと」ではなく「これからの方針」にフォーカスしてみましょう。
自分を被害者だと認識していると、被害者であり続けるためにどんどん行動意欲が低下していきます。
これから「変えられること」と「変えられないこと」に分類して、「変えられること」にだけ力を注いでみてください。
★裏切られたときの主な選択肢
・被害者としてあり続ける
→例.キラキラした職場じゃないからやる気を出さない
・環境や手段を変えずに他の成果物を求める
→例.キラキラした職場じゃないけど自分のスキルを上げる場として活用しよう
・期待する成果物を変えずに環境や手段を変える
→例.キラキラした職場に転職しよう
個人事業主によくある燃え尽きパターン
ここでは、個人事業主が陥りやすい燃え尽きパターンについてお伝えしていきます。
パターン①:誰がやっても同じ仕事
独立・起業問わず、唯一無二の仕事というものは滅多に存在しません。
どの業界でも競合他社は存在しており、自分がいなくてもお客様は簡単に代替手段を見つけます。
そのことをふと自覚したとき、自分の存在意義が分からなくなり、仕事への熱量が低下して燃え尽きてしまうことがあるのです。
- 存在意義あり:サラリーマンたちの癒しの場を作るために私は居酒屋を開業したい
- 存在意義なし:私が居酒屋を閉めてもこのお客さん達は他の癒しの場に流れるだけだ
「代わりはいくらでもいる」と認識して燃え尽きないためには、自分が社会の一部であることを認めることと、そのうえでどう生きたいのかを明らかにすることが大切です。
「相手にとって代わりはいくらでもいること」と「今その役割を担う存在は限られていること」を分けて考えてみてください。
- 社会の一部であると認める:誰にとっても唯一無二のかけがえのない存在にはなれない
- どう生きたいのかを明らかにする:社会に決められた天職を見つけるのではなく、自分が決めたい職や役割を見つける
ただし、「私ならもっとお客様を満足させられる」という差別化を図ることも疎かにしてはなりません。
「お客様に選ばれる理由」をどんどん精緻化していくことも、自分の存在意義を持つためには欠かせない要素だからです。
- 精緻化する:他の人に任せるくらいなら自分がその役割を担いたい。なぜなら…
- 精緻化しない:他の人がやってもどうせ成果や影響は同じ
準備中:自分の存在意義
パターン②:一生これを続けるのか
一度クリアしたゲームを周回することには、なかなかモチベーションを上げられません。
作業に慣れてくると、これに似た感覚が芽生えて仕事がつまらなく感じることがあります。
- 作業に慣れる前:どうすれば上手くなるんだろう、どうすれば稼げるんだろう
- 作業に慣れた後:数が大きくなるだけか、新しい発見はないのだろうな
特に楽しさを求めて仕事をしている人は、同じことの繰り返しと認識して燃え尽きやすい傾向があります。
ある程度の予測ができるようになると新しい経験を期待できなくなり、楽しさを見出しづらくなるためです。
「今のまま仕事を続けても当時のワクワク感が満たされない」と感じ、別の新しい仕事を探すようになります。
- 楽しさを求める人:仕事は「楽しい」という感情を手に入れるための手段、感情が大切
- 楽しさ以外を求める人:仕事は「目的」を達するための手段、感情は必要ない
一生これを続けるのかと感じやすい人は、仕事を変えても時間が経つと再び同じ感覚に苦しむようになります。
頻繁に仕事を変えるのも1つの手ですが、1つの仕事を飽きずに続けられるようになることを目指してみることも検討してみてください。
- 仕事を変える:仕事を転々することを強みとして認識して多くの経験を積む
- 飽きない工夫をする:目的を達すること、仕事を極めること、関係性を築くことに楽しみを見出す
また、タイムアタックのような作業自体に楽しみを見出す方法もありますが、天井が見えやすく一時しのぎの工夫になりやすいです。
仕事自体に飽きないためにも、「その仕事を続けた先にある未来への希望」をまずは考えてみることをおすすめします。
例.仕事を続けた先にある未来への希望
・私はどんな体験をしたいのか
・私は周囲にどんな影響を与えたいのか
・私はどんな技術や精神性を身につけたいのか
準備中:仕事に飽きたら
パターン③:職場から解放されて満足した
フリーランスのような個人事業主が最初に陥りやすい燃え尽きは、職場から解放されたことへの満足感によるものです。
会社を辞めた直後はモチベーションが維持されやすいですが、目標の収入が得られた途端に燃え尽きる傾向があります。
- 辞職前:早く会社を辞めたいからがんばろう!
- 辞職後:この選択を非難されないためにもがんばろう!
- 目標達成後:その気になればいつでも稼げるしなぁ…(燃え尽き)
当初の目標が達成されてしまったとき、燃え尽きから回復するためには次の目標を持つことが有効です。
自分の内面と向き合い、胸に秘めている欲求を満たすために動くようにしてみてください。
ただし、情熱が湧くポイントは、人によって異なります。
「他人からの評価」ではなく「自分がどうしたいのか」を判断基準にして、自分の欲求を満たすための目標を設定してみましょう。
例.情熱が湧くポイント
・成長すること
・成功すること
・お金を稼ぐこと
・他者に貢献すること
・人間関係を築くこと
・人間関係を深めること
・周りに影響を与えること
・新しいことを始めること
まとめ
燃え尽き症候群に陥ったら、「満足感」「報酬感」「ストレス」のどれが原因なのかを探ってみてください。
そのためにも、燃え尽きを生じさせている思考を言語化することが重要です。
自分がどんな期待をして、どんな現状に苦しくなっているのかを明確にしてみましょう。
理想にワクワクするだけではなく、継続できる仕組みを持つことが燃え尽きないための対策になります。
どちらか片方だけでは心身が削れて意欲が失われてしまうため、定期的に自身の感覚と向き合って無理なく前進できる状態かを確かめることをおすすめします。